短編

2009ハピバ記念
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『太陽の下で咲く月の花』



「菖蒲。」
「鈴蘭。」
「紅花。」
「白丁花。」
「・・・李。」
「吸葛。」
「・・・・・・牡丹?」
「杜若。」
「・・・・・・・・・白詰草!」
「芍薬。」
「・・・・・・・・・・・・。」
「降参?」
「・・・どうして、総司さんはそんなに花の名前をよく知ってるんですか!!」
「ん?それは当然かもね。江戸に居た頃も京に居た頃も、近所の子達と遊んでばかりだったから。
小さい女の子は妙に詳しくて、自然と僕も覚えちゃったんだ。」
春と言うには太陽の位置は高く、夏と呼ぶにはまだ冷たい風が吹くこの頃。
六月になってすぐ、何故か千鶴から弁当持参での散歩に誘われた。
普段は体に障るからと、ちょっと近所に足を伸ばすだけでも顔を顰める彼女にしては珍しい。
朝、まだ陽も昇り切らない時間に起き出して弁当を作り、昼にはまだ遠い時間に手を繋いで歩く。
道端に咲く花が可愛いと笑う彼女に、花の名前を教えていたらやけに喜ぶから、お互い六月の花を言い合う事になった。
千鶴も案外詳しいようだったけど、それでも僕に勝てない事にぷっくり頬を膨らませる様は存外可愛い。

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