2/4ﾍﾟｰｼﾞ目 「何っで新八っつぁんなんだよ！」 「当たり前だろうが！てめぇは年上を敬う精神がねぇのか！？」 「年上ったって精神年齢は絶対新八っつぁんのが低いしっ！！」 「僕を除け者にして二人で盛り上がらないでよね。僕だって一緒がいいんだから。」 「俺だ！」 「俺だろ！？」 「僕でしょ、当然。」 「・・・俺も、共に行きたい。」 「おめぇらなぁ・・・。」 「「「「千鶴は誰とがいい！！？？」」」」 目の前で言い合いを繰り返す大好きな人達。 その様子に我知らず怯えていた千鶴に、皆が一斉に声を掛けた。 「・・・ちる・・・・？ちるるは・・・。」 きゅっと眉間に皺を寄せ考え込む千鶴に、息を飲む一同。 しかし次の瞬間脱兎の如く走り去った小さな背中を、呆気に取られ思わず見送ってしまう。 「・・・あれ・・・？」 「あ～あ・・・。」 「見ろ！お前等がうるせぇから逃げちまっただろうが！」 「俺等のせい！？新八っつぁんが一番うるさかったし！」 「全員だろう・・・。」 千鶴が逃げ出した責任を皆が押し付けあう中、当の本人は中庭の隅に蹲っている。 そこにちょうど通り掛るのは・・・。 「あら・・・？あらあらあら？そこにいらっしゃるのは千鶴さんじゃなくて？」 「うにゅ？？いと～のおねぇしゃま？」 「そうよ～、よく覚えてらしたわね～。んふ、良い子。」 語尾にハートマークでも付きそうな笑顔で近付いてくる伊東に対し、嬉しそうに笑ったのは一瞬。 すぐに曇った幼子の表情にさすがの伊東も眉を顰める。 「ちょっと、千鶴さん。女の子は笑ってこそ可愛らしくあるんですのよ？一体どうなさったの。」 「ちるる、みんなしゅき。みんないっしょいい。でも・・・ちるるいたら、みんなめってしゅる。」 「・・・・・。ちょっと、山崎さん？いらっしゃるんでしょ？出て来て通訳して下さらない？」 伊東の言葉に何処に潜んでいたのか烝が音も無く現れる。 千鶴も烝の登場に顔を輝かせるが、やはりいつもの元気がない。 「お気付きだったとは、流石です。」 「と～ぜんでしょう？いつもご苦労様。で、何があったかご存知？」 「はっ・・・実は先程、幹部方が揃って誰が千鶴君を巡察に連れて行くか、で揉めていました。」 「・・・あの方達も、千鶴さんが可愛くて仕方無いのねぇ？だからと言って、これは頂けませんわね。」 これ、と伊東が指すのはしゅんと項垂れ烝に抱え上げられた千鶴。 今日は初めて千鶴を巡察に連れて行って構わない、と鬼の副長から驚きの許可が出たのだ。 その為、どの隊の巡察に連れて行くかで各隊長が大揉めに揉め始めてしまった。 千鶴も初めての事に喜んではしゃいでいたのだが、 皆の口論が激しくなるにつれて自分のせいで皆が喧嘩をしていると思うと悲しくなり、最後には逃げ出してしまったと言う訳だ。 「ねぇ、千鶴さん。今日はあたくしと御出掛け致しません？勿論、山崎さんもご一緒で、ね？」 「あい！！ちるる、おねぇしゃまとすむとおでかけ！しゅる！いっしょしゅる！」 「本当に良い子ねぇ？いいお返事だ事。山崎さん、そう言う事ですから、行きますわよ。」 「は？い、今からですか！？では誰かに伝言を・・・。」 「だ～め、駄目よ～。他の方には、な・い・しょ。」 綺麗に片目を瞑って流し目をされても、烝の背筋に鳥肌が立つだけなのだが、千鶴は伊東と自分との御出掛けに大はしゃぎ。 皆の喧嘩に憂いていたさっきより余程いいかと烝も溜息を吐いて伊東の目論見に加担する事にした。 「さ～て、どちらに参りましょうね？千鶴さんは何か欲しい物はないのかしら？ 可愛いお着物か髪飾りでも買って差し上げましょうか？ それとも甘いお菓子の方がよろしくて？」 「ん～・・・・。」 「千鶴君、遠慮している方が伊東参謀に失礼だ。欲しい物があるなら正直に言った方がいい。」 「ちるる・・・なかよちのおくしゅり、ほちい。」 「なかよちの、お薬？・・・まぁ・・・・。」 「千鶴君・・・。」 楽しそうにはしていても、やはり屯所に残してきた自分の事で喧嘩をする皆が気になるようだ。 小さな頭で一所懸命考えた結果、導き出した結論が『仲良しになるお薬』と言う事らしい。 その微笑ましいおねだりに、さすがの伊東もほろりと涙を誘われる。 「何て可愛いらしいのかしら！！これは、あたくしが一肌脱いで差し上げるしか、ないようね？山崎さんも協力して下さいますわよね？」 「俺に出来る事であれば、尽力は惜しみません。」 「では、千鶴さん。仲良しのお薬を求めに参りましょうか。 大丈夫ですわ。きっとそれを飲めば、皆さん笑顔で仲良しになって下さいますわよ。」 「あい！おねぇしゃま！」 一体何をするつもりなのだろう・・・。 にんまり笑う伊東の背後に、黒雲が見えたのはきっと気のせいだと思いたい烝だった。 [指定ﾍﾟｰｼﾞを開く] ＜＜重要なお知らせ＞＞@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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