新選組保育日記

Q〜子供は風邪の子〜
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子供は風の子とは言うものの
この寒さの中駆けずり回ればホッペは真っ赤の鼻水タラリ。
今日も元気な新選組お子様組。
けれど毎日そうはいかないのも、致し方のう御座います。


『○月×日 ゆきむら ちづる
      きょうはみんながいいこいいこってしてくれた
      みんないつもよりやさしかった
      すむとはじめ そばにいてくれた
      けど、やっぱりとしちゃとあそびたい     』

今はすやすや寝息を立てる養い子。
日記の文字も気のせいかいつもの勢いが見られない。
土方はそぉっと乱れた布団を掛けなおすと、オデコに張り付いた前髪を優しく梳きながら嘆息する。

「んじゃ・・・行って来る。いい子にしてろよ?」
「あい、としちゃいってらっちゃい。」
「・・・・。」
「副長、そろそろ出ませんと刻限に遅れます。」
「ああ・・・後は頼んだぜ、山崎君。」
「はい、千鶴君の相手は俺と斎藤さんで勤めさせて頂きます。」
名残惜しそうに仕事に向かう土方に、いつもならそんな事もない千鶴も少し離れがたいようだ。
珍しく少し涙目になっている。その様子になかなか出掛ける事の出来ない土方を、烝と一がほとんど無理矢理送り出す。
土方の背が遠くに見えなくなるまで見送った千鶴は、いつもならうるさく遊ぼう遊ぼうとまとわりつくのに、今朝に限ってはそれがない。
大人しく縁側に座り込み、お手玉で一人遊びを始めた。
その両側に烝と一も座るが、お気に入りの二人が揃っているにも関わらず千鶴は大人しいまま。
「あっれ〜?何か静かだなぁ〜とか思ったら、千鶴が静かなんじゃん。どした〜?今日は鬼ごっこしねぇの?」
「かくれんぼはどうだ?」
「お前がやりたいなら・・・おままごとでもいいぞ。」
鬼の副長が留守の間にあわよくば千鶴を独り占めしようと画策していた幹部達も、あまりに静かな千鶴の様子にわらわらと周囲に集まり
何とか気を引こうと遊びに誘う。しかし千鶴はそのどれにも首を縦に振らず、ただお手玉を玩ぶのみ。
「山崎君・・・。」
「すぐに用意します。」
「は?」
「斎藤君どういう意味?」
「ってか、今の会話として成立してたのか?」
「平助、すぐに布団を敷け。左之助、温石の用意だ。新八、火鉢をありったけ持って来い。総司、冷たい水と綺麗な手拭いだ。」
「「了〜解。」」
「「は?え?何??」」
斎藤の言葉をすぐに理解して行動に移るのは総司と左之助。
訳が判らず急にバタバタし出す面々をきょろきょろ見送るのは新八と平助。
「馬鹿、多分千鶴のヤツ熱があんだよ、通りで大人しい筈だ。」
「「え・・・・えぇぇぇ!!!」」
「大変じゃんか!何でそんな冷静なんだよ!」
「おい!松本先生呼んで来るか!?土方さん呼び戻さなくていいのか!」
「・・・五月蝿い・・・病人の横で騒ぐな。そのどちらも必要ない。」
「斎藤さん、薬湯が出来ました。恐らく千鶴君でも飲めると思いますが・・・。少し苦いかもしれません。」
「なるほど、山崎君がいたら、熊さん先生は要らないかな?千鶴ちゃんにとっては誰より名医だもんね。」
「総司、氷水は?」
「はい、どうぞ。僕等はあまり近寄らない方がいいかなぁ。」
「何でだよ?熱ある時って誰か傍に居た方が寂しくなくっていいじゃん。」
「僕だって傍にいたいけど、もしそれで移ったらどうするの?千鶴ちゃんが一番気にしちゃうでしょ。
って言うか多分近寄らせて貰えないよ、そこの二人に。」
総司が指差す二人は確かに冷ややか目を平助に向け、近寄るなオーラを発しまくっている。
「そう言う事だ。用のない者はこの部屋に近付くな。」
「・・・すむ〜?」
「呼んだか?」
(何であんな小さい声で聞こえるんだ!?)
幹部でさえ耳を澄ませても聞こえない声量で呼ばれた烝は、すぐに枕元に座り薬湯を渡しながら背中を撫でてやる。
「苦いかもしれないが、この薬湯を飲めばゆっくり熱は下がる。」
「ゆっくりって、すぐ下がらねぇのか?」
「千鶴は体が小さい。よって大人の飲む薬と同じ物では急激に解熱作用が効き過ぎて逆に危険を伴う。
見ているお前達も辛いかもしれないが、千鶴が一番苦しい筈だ。よく・・・我慢したモノだ。」
「そんなに酷いの?」
「はい、かなり熱が高いです。水分補給をコマ目にしなくては脱水症状を起こしてしまいかねません。」
「マジかよ・・・何でそんな我慢したんだ・・・。」
「恐らく、副長の邪魔をしない為だろう。」
「邪魔って?仕事に行くのを?」
「ああ、千鶴に熱があると判れば、副長は恐らく仕事をサボってでも傍にいたがるだろう。
千鶴はそれを懸念したんだ。・・・幼いくせに不釣合いな程気遣いをする所は千鶴らしい。」
「そうか・・・確かにそうかもしんねぇな。」
「じゃあ、俺達で土方さんの変わりしてやろうぜ。
伊達に新選組幹部を名乗ってる訳じゃねぇ。千鶴の風邪が移ったくれぇでぶっ倒れたりしねぇさ。」
「そうそう!皆で千鶴の世話してやろうぜ。」
「そうは言うけど、あんまり騒がしくしてもゆっくり養生出来ないんじゃない?やっぱり二人に任せた方がいいと思うけどなぁ?」
「総司の言う方が正論だな。俺だって傍にいてぇけど・・・。今は寝かせてやろうぜ。
元気になったら、嫌って程俺達が遊んでもらやいいさ。」
皆が千鶴を大好きで、皆が千鶴と遊びたい。千鶴の笑顔が見たい。いつも、いつでも笑っていて欲しい。
そんな願いを込めた視線が、床に伏せる千鶴に寄せられる。
「・・・早く・・・元気になれよな。」
「甘味、たらふく用意しといてやろうぜ。」
「千鶴の好きなままごともやってやろう。千姫を呼んでやれば喜ぶな。」
「元気になったら買い物に連れてってさ、何でも好きな物買ってやるんだ。」
「・・・花冠・・・作りに行こうかな。」
それぞれ千鶴が元気になったら何をしてやろうか、何を欲しがるだろうか、そんな事ばかり考えてしまう。
「・・・すむ・・・?はじめ〜?」
「そら、千鶴が呼んでる。行ってやってくれ。俺達の分も、頼んだ。」
新選組幹部の男達が、あの総司までが揃って千鶴の為に二人に頭を下げる。
その様子に一も烝も思わず息を飲んで目を見開くと、静かに瞠目し頷き返す。
「・・・了解した・・・。」
「お任せ下さい。」
千鶴の看病を託された二人もまた、心の底からその回復を願う想いは変わらないのだ。

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