新選組保育日記

L〜かくれんぼ〜
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新選組隊士の服装は、隊服以外は概ね自由である。
袴だろうがなんだろうが、特に文句は言われない。
武士らしくあればそれでいいのだ(多分)


○月×日  ゆきむら ちづる
 きょうはかくれんぼした
 かいくんはおっきいから
 ちづるをかくしてくれた
 つぎもかくしてくれるかな

毎日厭きもせず千鶴の日記を(盗み)読む副長土方。
読んだ瞬間、ここ最近の隊士の不可解な行動の理由を悟り、頭を抱える。
(あいつら・・・どんだけ千鶴が好きなんだ?)
うん、貴方もね!
そんな突っ込みは無視されて、さて千鶴と隊士達のかくれんぼ。
軍配は一体誰に上がった事やら・・・?

「ぃよ〜〜し!いっちばん、最後まで見付からなかったヤツの勝ちな!?俺が鬼になるかんな!」
中庭に響く声で平助がかくれんぼの開始を高らかに告げる。
「何でこんな餓鬼臭い遊びに・・・。」
「いいじゃねぇか、千鶴がやりたいってんだから。」
「たまに童心に還るのもいい経験だ。」
「っていうか、新八さんはいつも子供みたいじゃない。」
「っるせぇ!とっとと隠れるぞ!」
実は全員大人な筈が、数名お子様も混じってのかくれんぼ。
しかし新選組一の若手出世株。平助の前には既に老成したような大人の隠れ場所などすぐ様見つけてしまう。
「左之さん見っけ!押入れなんか定番過ぎ〜〜!」
「新八さん・・・折れるからさ、・・・その桜、土方さんのお気に入りだから・・・早く降りた方が身の為だと思う。」
「総司〜〜!!お前隠れる気あんのかよ!?何で茶飲んで寛いでんの!?」
「一君?・・・ある意味いい隠れ場所だけど・・・。でも池ん中って・・・下手すると死ぬから、な。」
「源さ〜ん、見つけた〜ってより・・・仕事中お邪魔しました〜。」
あっちウロウロ、こっちウロウロ。次々見付かっていく隊士達。すでにかくれんぼとは言えない様相になりつつあるが・・・。
「あれ?島田さん、さっきもここに居なかった?何やってんの?」
「いや、自分は、藤堂さん達の勝負の行方を見守ろうかと・・・。」
「ふ〜ん?じゃあ次からは一緒にやろうぜ!千鶴〜〜!!どこ隠れた〜〜!」
「んだよ、まだ千鶴見付けらんねぇのかよ?」
「同じ精神年齢なんだからさ、すぐ見付けなきゃ。」
「千鶴は小さい。よって隠れる場所も俺達より豊富なんだろう。」
「にしたってさ〜。俺結構探したぜ?それでも見付からないておかしいって!」
「まさかとは思うけど、屯所の外に出たとか・・・。」
「いえ、それはないと思います。」
千鶴の身を案じて外まで行きかける平助達を島田が慌てて引き止める。
「そういや・・・島田君ずっとそこにいたよな?千鶴見なかったか?」
「いえ・・・・見てないです。」
「ふ〜ん、じゃあ、どこに隠れたんだろう?どうせ千鶴ちゃんの勝ちは決定でしょ?平助が降参したら出てくるんじゃない?」
「いやだね!ぜってぇ!見つけるし!」
「・・・子供が子供に意地を張ってどうする・・・。」
「一君、何か言った?」
「いや・・・・では皆で手分けするのはどうだろう?」
「そうだな、そろそろ暗くなってくるしな。」
そんな訳で屯所内、千鶴捜索隊が活動を開始。
したのだが・・・。
「や〜ぱ見つけらんねぇ!おかしくね?」
「これ、ちょっとやべぇんじゃねぇの。マジで暗くなるしよ。」
「だよね、早く見つけてあげないと、心細くて泣いちゃうかも・・・。」
それはヤバイ!千鶴も心配だがもしも泣かせた場合の土方副長のシゴキも怖い!再び捜索隊が活動しかけた時・・・。
「・・・島田君、何故そこから動かない?」
「あれ、そう言えば・・・ず〜とそこにいるよな?もう勝負も付いたし、何で?」
「ってか、微動だにもしねぇよな。」
怪しい・・・。一同の視線が集まる中、島田はダラダラ冷や汗を流しつつ、一言呟くだけ。
「じ・・・自分は貝になります!」
「はぁ??」
さっぱり訳が判らない平助に、一がしっと口に指を当てて皆を連れ島田から遠ざかる。
「島田君の袴を見てみろ。」
「あ?袴・・・?」
皆で島田の袴に視線をやれば、何だか不自然に膨らんだ袴。そして裾から覗く小さな足・・・。
「・・・あ!」
「こりゃ、見付かんねぇ訳だわ。」
「ってか、灯台下暗し?」
「俺ずっと目の前往復してたのに・・・。」
「平助、もういいだろう?」
「あ、うん!千鶴〜〜〜こ〜さ〜ん!俺の負けだから、出て来〜い。」
平助が開始と同じく高らかに告げるも、千鶴は出てこない・・・。
「ありゃ?」
「あ〜〜・・・皆さん、その〜〜。千鶴君は、どうやら待ちくたびれたようで・・・。」
島田が困り果てたように袴をたくし上げれば、足に纏わりついた千鶴の可愛い寝顔。
「寝ちゃってるよ。」
「待ちくたびれもするわな。」
「ってか島田君。凄いね、ずっと動かずにいるなんて。」
「は・・・さすがに疲れました。」
「ご苦労さん、島田君。」
皆に肩を叩かれ労われるが、千鶴の穏やかな寝顔を見れただけでも幸せな島田。
こんなかくれんぼなら、次回もまた見学に回ろうと思えるのだった。

「そんで、楽しかったのか?」
「あい、かいくん、おっき〜あったかい!」
(そりゃ、袴ん中はあったけぇだろうよ)
楽しそうにかくれんぼの様子を話す千鶴の頭を撫でながら、最近隊士の多くが少し大きめな袴を着用している原因を知り
溜息を吐きつつ、自分も次は参加しようかと考える土方だった。
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