短編集

マジで嵐の5秒前〜藤堂君〜
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「・・・で?」
「・・・。」
上せたような平助は広間の隅に寝かせられ、千鶴に扇いで貰っている。
そして鬼の副長土方が仁王立ちする前で微妙に居心地悪そうに座る幹部の面々。
「で、って言われてもなぁ?」
「不可抗力だ。」
「だって僕等平助の悲鳴を聞いて駆け付けただけですよ。」
「そうそう、元はと言えば、妙な叫び声を上げる平助が悪い!」
「その平助は何だってすっぽんぽんで千鶴と風呂に入ってたんだ。」
「あ、違うんです。私が先に入ってたんですけど、平助君間違えて入ってきちゃったみたいで、それで驚いたんだと思うんですけど・・・。」
「だからって何で脱衣場に二人でいたんだ?」
「それは・・・・平助君、私を見た途端逃げちゃったんです。私、そんな逃げられるような顔して怒ってなかったと思うんですけど・・・。」
・・・・。
(それは・・・あれだろ。)
(顔じゃなくて体だろ。)
(惚れた女の全裸に逃げ腰になるとはな。)
(据え膳も食べられないなんて、平助も情けないよね。)
(・・・気の毒としか言えんな。)
皆それぞれ思う所があるようで、微妙に視線を逸らし無言になった幹部の耳に、千鶴の拗ねた声が聞こえる。
「どうせ、私は怖い顔してますよ〜。」
「っていや、ちげぇから。」
「誤解すんなって。」
「君は怒った顔も可愛いから大丈夫だよ?」
「・・・そんな事より平助はまだ目覚めんのか?」
そんな事っ!?
斎藤の言葉に皆が目を剥く中、渦中の平助が「う〜ん」と一唸りして目を覚ました。
「あれ・・・俺?」
「良かった!平助君、目が覚めたんだね!ごめんね、私怖がらせちゃって!」
「え!?あ、いや・・・・いや〜〜〜?へ、平気!大丈夫だって!」
どうやら裸を見た事は不問に伏される様子に便乗する平助に、他の面々の声が飛ぶ。
「へ〜すけ?明日の稽古は覚悟しろよ?」
「あれで許されるって、若さの特権か?」
「色んな意味で鍛え直さなきゃね?」
「不甲斐ない・・・。」
皆の言葉に再び青くなり卒倒しそうな平助に、副長土方が追い討ちを掛ける。
「その程度で卒倒するようじゃ話にならねぇ!明日は俺直々に稽古してやる!」
「げっ!マジで!!」
青くなったかと思えば赤くなった平助に、千鶴が心配そうに額に手をやる。
「皆さん!平助君は倒れちゃったんですよ!?具合が悪いのに、明日は一日お休みに決まってるじゃないですか!
平助君!部屋に戻ってもう寝よう?私寝付くまで扇いであげるよ、ね?」
ね?と小首を傾げる千鶴は非常に可愛らしいがその後ろに控える幹部は可愛らしいと言うより恐ろしい。
引き攣りながら笑顔を浮かべる平助を、千鶴は無理矢理引っ張って連れて行く。
その背中に幹部の冷たい微笑みが向けられていた事は、千鶴だけが知らなかった。
「さ、平助君!寝て?」
「あ、ああ・・・・。」
「少し寝苦しかったら言ってね?冷やした手拭取って来るから。」
千鶴の裸を目撃し、あまつ手厚い看護も受けられて、幸福絶頂な平助は少し位の鬼のシゴキに今なら耐えられそうだなぁと鼻の下を伸ばし切って思ったのだった。



→(恒例の)オマケ
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