短編集

交わした言葉の一つずつ
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「な、今度花火あんじゃん?一緒行かね?」
「花火?え、でも・・・」
「大丈夫!土方さんに許可貰うし、絶対今度こそ一緒に行くから。っつか、行きたいから、俺が」
「平助君、ありがと。でも、無理しないでね?」
「無理じゃねぇし、今度は絶対だから、指切り!な!?」
「・・・ん、指切り、ね」
そう言って笑ってくれた顔は、少し寂しそうだった。
きっとまた無理だって思ってるんだ。
俺は新選組で、八番組背負って立つ組長で、何を一番優先しなきゃだとか十分解ってる。
解ってるけどだからって人生捨ててる訳でもなければ惚れた女を蔑ろにするつもりなんか全然ない。
全然ないから、俺は俺なりに絶対今度の約束だけは守りたいって思ってる。
「土方さん!頼みがあんだ!」
「却下、だ」
「ちょ、内容くれぇ聞いてくれたっていいだろ!」
「聞かなくても解る、今度の花火大会行きてぇとかそんなとこだろうが。許可出来るか、阿呆!」
「そこを何とか!」
「却下」
「土方さん!」
「無理だな」
「なんでだよ!!」
「花火なんざ人混みに出て、もしあいつが襲われでもしたらどうする。お前一人で守り切れんのか」
「っ!!」
以前なら違う理由で反対したくせに、今は真逆の意味で反対する土方さんも千鶴に随分絆されてんだなぁとか場違いな事に感心しつつ、俺の剣士としての色々まで否定しなくってもいいだろうと悔しさが込み上げる。
ちくしょう・・・。
そりゃ土方さんや総司には負けっぱなしだけど、それでも俺だって真面目に鍛錬してきたつもりだし、そんな風に扱き下ろされる謂れはない。
ムクムクと頭を擡げた対抗心は、そのまま視線の強さになって土方さんに向かった訳で、当然それに気付かない副長でもない訳だ。
「言っとくが、本人がどう言ったって許可しねぇぞ」
自分でもあいつの目を見て真っ向から反対し続ける自信はないのか先に牽制された。
最初からあいつに頼るつもりなんかないし!
「誰も千鶴に説得してもらおうとか思ってねぇ!っつかさ、俺が強かったらいい訳?一人でもあいつを守れる位?」
「は!お前がそれなりに強いのは知ってる。俺が言ってんのはそういう事じゃねぇ」
「だったらどういう事だよ!あいつと約束したんだ!今度こそ絶対って!男がそう何度も約束した事破ってられっかよ!!」
「無理だな、出来もしねぇ約束をしたてめぇが悪い」
「・・・勝負、してくれよ」
「あ?」
「今まで、土方さんには負けっぱなしだったよな?じゃあさ、もし試合って俺が一本取れたら、許可してくれ」
自分で思うよりずっと低い声で、握った拳を睨みながら土方さんに喧嘩を叩き売った。
今の俺じゃまだ敵わない事なんて知ってる、けど譲れない事だって、あるんだよ土方さん。



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