短編集

相合傘〜花雫〜
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実は雨の日はそんなに嫌いじゃない。
冬の雨は寒いし、春の雨は桜が散るし、夏の雨は蒸し暑い。
けど、嫌いじゃない。
何か空気が洗われてく気がするから。
今も空から大粒の雨が落ちて来る。
俺はその下で雨空を見上げるでなく、傘も差さずに中庭に居た。
「あれ・・・?平助君?」
「ん?千鶴、どした?」
「どしたって、何してるの!?びしょ濡れじゃない!」
「え!?わっ・・・!」
バシャンっと水音が聞こえたと思ったら、思い切り腕を引かれた。
驚く俺の腕をそのまま引っ張って縁側へと連れて行かれる。
「もう!風邪引いちゃう!」
ガシガシと持っていた手拭で頭を拭かれるのが、ちょっと痛い。
「ち、千鶴!いいって!もう褌までぐっしょりだから!」
「ふっ・・・!!な・・・何で雨の中でぼぉっとしてるのっ!?」
「いや、雨ってさ、色々綺麗になる気、しねぇ?」
「色々って?」
不思議そうに首を傾げる千鶴に、俺は庭に咲く紫陽花を指差して笑いかけた。
「ほら、紫陽花がさ、綺麗じゃん?ああやって、他のもんも綺麗になったらいいなとか思わねぇ?」
「雨で、全部洗い流されるからかな・・・。」
俺の指差した紫陽花とか、他の緑とか見回して千鶴は目を輝かせる。
俺が言ったのは、ちょっと違う意味もあるんだけどさ。
「うん、全部・・・。ぜ〜んぶ、綺麗になったらいいのにな。」
ぽつりと零した俺の小さな呟きは、千鶴に届いたかどうか判らない。
けど急に縁側から飛び出た千鶴が、傘も差さずに雨の中で俺を振り返った。
「こうしてたら、私も綺麗になれるかな!!」
満面の笑顔で、雨の中千鶴が俺を見ている。
頬を叩く雨粒は勢いを増すのに、千鶴の笑顔は曇る事もなくて。
「ばーか・・・」
俺は思わず俯いた口元に小さく笑みを浮かんだ。
「風邪引くのはお前だろ!」
「でも、雨粒が気持ちいいかもっ!」
俺は手を広げる千鶴の元へと駆け寄り、二人で空を見上げる。
「止みそうもねぇな。」
「うん。止まないね。」
結局、ずぶ濡れの俺達を山南さんが見付けて怒鳴られるまで、俺達は雨の中空を見上げていた。
途切れる事のない雫が、花を綺麗に咲かすように。
途切れる事のない雨が、俺達の穢れすら、洗い流してくれないかと願うように。





*****
相合傘してねぇ!!
しかし
これは心の相合傘なのだ!(言い切った!)
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