短編集

君しか要らない〜微裏?〜
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何でこんな事してるんだろう。
俺が今、一番考えてるのはそんな事。
俺の腕の中には少しだけ千鶴に似た笑顔の、島原の遊女。
いつも新八っつぁん達に連れて来られても、酒しか呑まない俺に業を煮やした二人が半分無理矢理俺の為にと呼んだお姐さん。
俺は余計なお世話だって断ったけど、いざ本番って時に恥かきてぇのかとか、女の一人も知らねぇで女を口説く事なんか出来ねぇとか
もっともらしい顔で説教されて、部屋に押し込まれた。
俺は最初っから抱くつもりなんか無かったし、そのまま帰ろうとしたけど、
座敷に呼ばれて床にまで入って何もされないなんて遊女の誇りがどうのとか言われたら・・・引くに引けなくなった。
少しキツイ香が鼻を擽る中で、柔らかい胸とか、くびれた腰をなんとなく揉んだり触ったりしてたら、微妙な反応が面白かった。
「藤堂さん、初めてやて聞いたけど、ホンマなん?」
そう聞かれるって事は、これでやり方としては間違ってねぇんだなぁとか思いながら、身を捩るその人のふとした仕草や横顔が千鶴を思い出させて、それが俺に拍車を掛けた。
「・・・初めてだって。っつか、やっぱ何か・・・。」
確かに似てる。
似てるんだけど・・・。
俺を見上げる目とか、濃い化粧とか、似てるけどやっぱり千鶴じゃねぇんだって俺に改めて知らせてくる。
「・・・ごめん、俺・・・やっぱ無理だわ。」
「え?ちょ、ちょっと藤堂さん!?花街で遊女置いてくやなんて、恥かかせんといて!!」
「わりぃ!俺、惚れた女じゃねぇと無理みてぇ!マジでごめん!!」
平謝りに謝って、ちゃんと理由も話して頭下げて、何とか勘弁して貰った俺は、新八っつぁん達は放って全速力で屯所まで走った。
無性にあいつに逢いたくて逢いたくて、仕方なかったから・・・。
走って走って屯所に着いた俺は、真っ直ぐ千鶴の部屋に向った。

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