1/3ページ目 第弐章〜砕けた夢の破片〜 〜君の砕け散った 夢の破片が 僕の胸を刺して 忘れてはいけない 痛みとして刻まれてく〜 元治元年七月 先の八月十八日の変により、京を追われ、更に池田屋騒動で会津藩への怒りを燻らせた長州勢は、自藩の冤罪を訴える為挙兵した。 新撰組は、御所付近に兵を構えた長州より、天子様をお守りする為、蛤御門付近の警護を任ぜられる事となった。 後の、禁門の変の始まりである。 張り詰めた空気の中、私は斎藤さんらと共に蛤御門の警護に加わっていた。 薩摩との一触即発の場面もあったが、斎藤さんと鬼である天霧さんの機転により、それも事無きを得た後、 一先ずは様子見をし、天王山へ向かった土方さんへ伝令を走らせる事となった。 「誰を行かせるかだが・・・。」 「俺が向かいましょう。」 山崎が買って出るが、斉藤は首を縦に振らない。 「いや、今山崎君にここを抜けれるのはマズイ。いざと言う時の為に残っていて欲しい。」 「判りました。ですが、それでは誰を・・・。」 「そうだな・・・。」 既に其処彼処で行われていた戦闘の火種も沈下し、天王山へ向かった残党狩りと、 公家御門での小競り合いが収束すれば、今回の戦は終わる。 それが判っているからこそ今の蛤御門の状態を土方さんに伝える必要があった。 「あの・・・」 きっと却下されるだろうとは思いつつ、私は自分が向かってはどうかと提案してみる。 「千鶴か・・・。」 「やはり、私では駄目でしょうか?」 「駄目に決まっているだろう。既に戦闘は収束したとは言え、今だ長州の残党兵全てを捕らえた訳ではないんだ。」 山崎さんが珍しく声を荒げて反対を口にする。 けれど、その山崎さんの反論を遮るように斉藤さんは私に視線を向ける。 「本当に、行けるか?」 「はい、行きます!」 「斉藤組長!?」 「今、山崎君に此処を離れられては困るのも事実、すぐにでも副長に伝令を走らせなければならないのも事実。 そうなれば、取れるべき道は限られて来る。」 「しかしっ・・・!」 「山崎君が反対するのも、尤もだ。 道中で長州の奴らとかち合う可能性は五分と五分。 安全の保証は出来ない。それでも、行くか。」 最早問い掛けではない、意志の確認。私は、竦みそうになる足に力を込め、睨むように斉藤さんを見詰める。 「行きます。」 「馬鹿な!」 即答する私に山崎さんの瞳が驚愕に見開かれる。 「大丈夫です、山崎さん。私、こう見えても逃げ足には自信があるんです。」 不安を隠すように微笑を返せば、視線を逸らした山崎さんが小さく舌打ちをする。 「先程言ったように、君の任務は天王山へ向かった副長への伝令だ。 この道をひたすら真っ直ぐ南へ走れ。 決して立ち止まるな。 もしも敵に遭遇しても戦うな。天王山でも、公家御所でも、どこでもいい。新選組隊士のいる場所へ向かって逃げろ。」 「逃げていいって・・・でも。」 「構わない、君は新選組隊士ではない。例え敵前逃亡したとしても責められはしない。 生きる為に敵に背を向ける事は、恥ではない。 何より・・・必ず、生きて辿り着け。いいな?」 「はい・・・っ! では、行きます!」 「武運を・・・。」 斉藤さんが、小さく呟き一瞬手を握り合う。深く頷きを返し、私は天王山へと走り出した。 [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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