新選組監察方観察日誌シリーズ

E〜病は気から〜羅様22000HITキリリク
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俺の名前は山崎烝
新選組諸士調役兼監察方だ。

通常であるなら影ながら千鶴君の様子を見護るのだが・・・。
どうも今朝から彼女の様子がおかしい。
ぼんやりしているかと思えば、急にしゃきしゃき動き出し、やはり急にしょんぼりと肩を落とす。
そしてその顔に薄っすら赤味が差し、いつもより息が上がるのも早いようだ。
これは・・・もしや・・・。
「も〜永倉さん重いです〜〜。」
「千鶴君。」
「げっ!?山崎君!!?」
のっしりと千鶴君の背中に張り付いていた永倉さんが、俺を見て顔色を変えるが、今は引っぺがすだけに留め
千鶴君の額に手を当てる。
「あ・・・・。」
慌てたように逃れようとするが、その時俺の手に感じられた熱は、明らかに常人のそれとはかけ離れている。
「やはり・・・いつからだ。」
「え!?もしかして熱あんのか!?」
「嘘!千鶴具合悪かったの!?」
「マジかよ・・・全然気付かなかったぜ。」
それぞれ異なった反応を示す所を見れば、誰も気付いていなかった、と言うより気付かせていなかったようだ。
「山崎さん・・・。」
俺にバレた事で気が抜けたのか、一気に赤味の差す頬と気だるげになる千鶴君。
「言い訳はいい。今は早く横になれ。」
「何故早く言わない。」
「俺、松本先生呼んでくる!」
「俺は布団敷いて来る!」
「台所にあったけぇ食い物と氷の用意させてくら。」
藤堂さん、永倉さん、原田さんが飛ぶように駆けていき、斎藤さんは渋い顔で考え込んでいる。
俺は千鶴君を抱き上げ部屋へと運んだ。
熱が急激にあがったのだろうか?真っ赤な顔で千鶴君は申し訳なさそうに笑う。
「すみません・・・山崎さん。」
「気にするな、今は早く休む事だ。」
「はい・・・。」
そのまま瞳を閉じて眠ったらしい千鶴君を、永倉さんが敷いてくれた布団に寝かす。
「なぁ、大丈夫かよ?」
松本先生の診療の後、どこから湧いて来たのか局長を始め副長、井上さん、沖田さん、
斎藤さんに井上さん、何故か島田君まで集まっている。
「大丈夫だよ。色々あって気疲れしたんだろう。滋養のある物をしっかり食べてゆっくり眠ればすぐよくなる。
ただ、熱は当分続くかもしれんなぁ・・・。山崎君。」
「はい?」
「ワシが付いてやれればいいんだが、そういう訳にもいかなくてな、すまんが彼女の面倒を頼めるか?」
「はい、大丈夫です。副長、彼女が完治するまでこちらを優先して構いませんね?」
否やを言わせぬ視線で副長を射抜けば、当然副長も首を縦に振る。
もし駄目だと言われたら副長をも抹殺する覚悟だったが、その必要はないようだ。
「では、千鶴君には安静が必要ですので、皆さんは各自隊務へと戻って下さい。後は俺にお任せ下さい。。」
名残惜しそうに引き下がる皆を尻目に、俺は部屋に戻ると、千鶴君が外の気配で目を覚ましたようだ。
「山崎さん・・・?」
「ああ、起こしてしまったか。起きれるようなら何か・・・。
口に出来るかと言おうとした時、ドスドスと廊下を向かってくる足音。
「千鶴〜粥持って来てやったぞ〜」
すらっと襖を勝手に開けて入ってきたのは永倉さん。
「まずは食って体力つけねぇとな!」
それは最もですが、何故貴方が持って来る、しかも病人の前でデカイ声で喋るなこの筋肉馬鹿が!
とは思ったが口には出さず、彼の手から粥の乗った盆を受け取りながら極細声で永倉さんに忠告を促す。
「永倉さん、彼女は今は安静が必要なんです。
申し訳ありませんが、即!刻!退出願えますか。」
ちらとも申し訳ないなど思ってはいなかったが、そこは社交辞令と言うものだ。
「うえ・・・す、すまねぇ。」
俺の剣幕に押されたのか、素直に部屋を出て行った。
名残惜しそうに千鶴君に目を向けるが、俺は首を振って早く出て行けと目で脅しておく。
外では「ぎゃ〜〜!!」等とダミ声が聞こえたが、恐らく外で千鶴君の安全を護る斎藤さんの仕業だろう。
相変わらずいい仕事振りです、斎藤さん。
「・・・千鶴君、薬を飲む前に何か食べておいた方がいい。
ちょうど永倉さんが粥を持って来て下さったのだから、少しでも食べれないか?」
「大丈夫です、食べます。」
「無理はしなくていい、食べられる分だけで」
「はい、ありがとうございます。」
苦しいだろうにそんな素振りは全く見せない健気な彼女に、思わず袖口で涙を拭う。
「ああ、熱いだろう。冷ましてやるから待て。」
熱く滾った粥を息を吹き掛け冷まし、彼女の口元へやると、そのまま俺の手からぱくりと食べた。
「あ、す、すみません!つい・・・自分で食べますから・・・。」
熱のせいばかりでもない程顔を赤くして、俺の手の椀を受け取ろうとするが、俺は被りを振って断った。
「構わない、火傷しそうに熱い。今の君の状態では危険だ。」
適当な事を言っているが要するに俺が彼女に食わせたいだけだ。
「じゃあ、お願いします。」
ほんわかと笑う彼女に次の一口を差し出した時、再びトストスと聞こえる足音。
「千鶴ちゃん、どう?」
どうもこうもない!先ほど安静にと言った松本先生の言葉はどこに消えたんだ!沖田さん!
「あ、大丈夫です、すみません・・・ご心配お掛けして・・・。」
「いいんだよ、今はゆっくり休んだらいいから、気にしないで?」
いかにも優しげに言っているが、ゆっくり休む為にはあんたが邪魔してると気付け。
「沖田さん、彼女の様子を確認しに来ただけならもういいでしょう。」
「山崎君、こんな時だけど役得だよね、千鶴ちゃんを独り占めなんてさ。代わってあげようか?」
ぐいぐい背中を押して部屋から追い出す俺に、沖田さんはそんな捨て台詞を残す。
「いいえ!結っ構!です!!」
どんと廊下に押し出し襖を閉める。ざ〜んね〜ん等と聞こえる声はガン無視だ!
千鶴君は驚いたように目を見開いている。
「山崎さんって、そういう話し方もされるんですね〜」
「あ、いや・・・・不快、だろうか?」
「いいえ、新鮮な感じがします。」
「そうか・・・。」
「はい。」
「粥を食べたら薬を飲もう。今、白湯を貰って・・・。」
千鶴君の視線に居たたまれなくなり、立ち上がったその時・・・。
「千鶴〜いい〜もん、持ってきてやったぞ〜」
元気な声と音で部屋に乱入するのは藤堂さん。
「藤堂さん・・・。」
「ほい、これ。月餅!この餡子がうめぇんだよなぁ。」
にこにこ笑いながら千鶴君に月餅を渡す藤堂さんの襟首を掴み、ぶらりと垂れ下がった藤堂さんに、
一言一言釘を刺すよう笑顔で今の状況を教えて差し上げる。
「藤堂さん、千鶴君は今、絶対っ安静なんです。
安静という言葉はご存知ですか?知らないのであれば教えて差し上げますが?
二刻程掛けて懇切丁寧〜〜〜に!そのお利口な脳みそに刷り込んで差し上げますよ?」
あくまでにこやかに告げれば、滅多に見れない俺の笑顔が怖かったのか、状況を理解したのか・・・・。
「いや!解る!知ってる!大丈夫!!・・・って事で・・・・また来・・・・ません、戻りま〜す。」
すごすごと去って行った。そして響く断末魔。出来れば潜入される前に抹殺して下さい、斎藤さん。
「全く・・・。」
呆れたように溜息を吐く俺に、彼女は楽しそうに笑いを零している。
「とりあえず・・・白湯を・・・・。」
再び白湯を貰いに立ち上がる俺の耳に再び足音が聞こえる。
今度はどこのどいつだ!!
「千鶴、白湯持って来てやったぜ」
ちょうど白湯が欲しかったのでありがたいですが、皆さん絶対安静の意味を本っ当に判ってらっしゃるんですかねぇ?
原田さん?
「ありがとうございます、ちょうど薬を飲ませて寝かせる所だったんですよ、原田さん!」
白湯を受け取りながら薄っすら笑顔を浮かべてじっと顔を見る。
「お・・・おぉ・・・。それは、ちょうど良かったやな。で、千鶴は・・・。」
「大丈夫です!俺が付いてます!安静にしていれば!すぐ治りますが、皆さん安静の意味をご存知ないようでしてね?」
目だけで『出て行け』と伝えてみると、感のいい原田さんはすぐ察して飛ぶように部屋を出て行く。
「そうか!それなら安心だ!じゃ、俺行くわ!早く元気になれよ!!」
逃げる位なら最初から来ないで頂きたいですね、今度不幸の連鎖文でも送りつけるか・・?
何はともあれ、白湯が届いたのでゆっくり薬を飲ませる。
かなり苦い薬のようで、口に含んだ途端千鶴君は顔を顰めた。
「うぇ〜〜。」
「そんなに苦いか?」
「苦いですよ〜〜。」
熱のせいばかりでもない涙を浮かべる千鶴君は、殺人的に可愛いっ・・・!!
「雪村君、いるかね?」
危うく俺の理性が吹き飛びかけた時、襖を開けて入ってきたのは局長。
さすがです!局長!!
「どうだ?具合は。」
「熱は全く下がらず上がる一方でしたが、先ほど解熱薬を飲ませましたので、四半刻程で効いてくる筈です。」
「そうか、早く良くなって、元気な笑顔でお茶を入れてくれ。君がいないと、どうも落ち着かん。いや、歳かなぁ。」
はっはっはと朗らかに笑う局長は、ごそごそと懐を探り、小さな包みを取り出す。
「わ・・・可愛い。」
それを手渡された千鶴君は色取り取りの包み紙に笑みを浮かべ局長を見上げる。
「うむ、風邪には甘い物もいいかと思ってな。薬は苦いだろう?実は俺も苦手なんだ。」
「そうなんですか。」
「ちょうどよかったな、苦い薬に泣きそうになっていただろう。」
「お?そうなのか、はっはっは、じゃあこれを食べて、早くよくなるんだぞ?あまり長居しては体に障るからな、俺はもう行く。
山崎君、よろしくな。」
「はい、局長。」
「ありがとうございました。」
普段からは考えつかない心尽くしに、一瞬首を傾げるが、千鶴君が開いた包み紙を見て謎が解ける。
「・・・あの二人らしい。」
「本当ですね。」
中には小さく折りたたまれた文が二通。
井上さんからの『早く元気な顔で笑ってみせておくれね』
島田君からは『元気になれば甘味屋に行きましょう。今は、これで。』
三人が直接来ては安静に出来ないと、局長が代表として来たのだろう。
三人の心遣いに千鶴君の瞳が潤む。
「さぁ、治ったら、一番に三人にお礼を言いに行けるように、もう寝ておけ。」
素直に布団に入った千鶴君を見届けると、温くなった桶の水を替えに立ち上がる。
すると、再三再度、襖を軽く叩く音がする・・・。
今度は・・・・どいつだ!!
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