新選組監察方観察日誌シリーズ

@〜雪村千鶴を護衛せよ〜
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俺の名前は山崎 烝
新撰組諸士調役監察方だ
副長である土方さんの元、敵方の監察・諜報活動だけでなく
隊内の規律を質すべく、内偵等も行っている。
今日はその俺の一日を報告書にまとめるべく
綴ってみようと思う。

まずは鍛錬場
今朝も隊士達は、京を守り民を助く為己を磨いている。
が、しかし。
先ほどから俺の目の端に映るあの光景は一体何なのだろう。
明らかに鍛錬の場にそぐわない可憐な立ち姿は、父を捜す為、単身京へ来たという娘
確か名は・・・

「あ〜違う違う」
「え、こ、こうですか?」
「ん〜〜違うって。こうだって」
剣の手解きを受けているのだろう。
小太刀を握り真剣な表情だ。
その彼女に、そうじゃない、とにやけた顔で手を添えて素振りを指導するのは二番組組長 永倉 新八

「そうそう、そこで左手をもっと絞るようにするんだ。」
「あ、そうすれば、脇が締まってスキが減るんですね!」
「そう言う事〜」

雪村 千鶴。
なるほど、父を捜す為、新撰組に身を寄せる以上、己の身は己で守ろうと言うのか。
真剣に鍛錬に取り組んでいるようだ。
なかなか感心な少女だ。
しかし。

「んでな、もっと腰を落とすんだ。」
「こうですか?」
「違うって、それだとケツが出てるだけだ。膝から落とす感じだ」
そう言いながら、腰だの太ももだのに触る永倉組長のあの顔は、どうだろう。
はっきり言って触る必要のない部位にまで手が触れている気がする。
不快極まりない・・・。
・・・・いや。
俺は何を考えているんだ。
しっかり隊士の内偵をしなくては・・・

「きゃっ」
「あ、わりぃ。力入り過ぎちまったか!?」
永倉組長の打ち込みに思わず小太刀を取り落とす雪村君。
その彼女に、いかにも心配しています的に口付けせんばかりに近付くのは何故だ!!
傷の具合を見るだけならそこまで近付かなくても構わない筈だ!
何故か俺の不快指数は絶賛上昇傾向にある。
「あの、大丈夫ですよ?大した事ないですから」
「い〜や俺の馬鹿力で打ち込んじまったんだ。骨にも異常があったら大変だ。
向こうの部屋でちゃんと診てやるよ」
向こうの部屋とはどこだ。
あちらは永倉組長の私室ではなかったか。
そこに雪村君を連れ込み何をするつもりだ。
手首を見ると言いつつ他の部分も診るつもりではないだろうな。

「さぁさぁ行こうぜ、千鶴」
鼻の下が伸び切っているように見えるのは俺の気のせいか・・・?
「え、でも、ホントに大丈夫ですから」
「おめぇが大丈夫でも、俺が大丈夫じゃねぇんだ。何たっておめぇは俺の・・・」
はっ!?

「ぐぼぉぉっ!!?」
気がつけば飛び苦無が永倉組長の頭に・・・
「え?きゃぁ?永倉さん!?」
すかさず彼女の元に駆け寄り救出成功
勿論、彼女に見えないように苦無はとっとと懐に仕舞いこむ事も忘れてはならない。
迅速な対応こそが、俺達監察方の特徴だ。
「あら?山崎さん戻ってらしたんですね」
「ああ」
「永倉さんが急に倒れられたんです。大丈夫でしょうか。」
「大丈夫だ。昨夜も遅くまで呑んでいた。まだ抜けていなかった酒が鍛錬で回っただけだ。」
「も〜また呑んでらしたんですね。仕方無い人ですよね?」
にっこり微笑む彼女に、何故か俺の心臓が撥ねた。

「と、ところで・・・」
何ですか、と言うようにこちらを覗き込む彼女。
頼むから
あまり近付かないで欲しい・・・。
「手首を傷めていたようだが、俺で良ければ診よう。打ち身に効く塗り薬が部屋にある」
「あ、じゃあ、お部屋にお邪魔してもいいですか?」
「え?いや、勿論構わないが・・・」
「じゃあお言葉に甘えてお邪魔します」
「しかし・・・・先ほど君は、永倉組長の私室に行くのは嫌がっていなかったか。」
俺の問いに彼女はすっぱりきっぱり答える。
「だって、何だか身の危険を感じたんです。永倉さんには失礼ですけど」
変ですよね〜と無邪気に笑う彼女だが、なるほど危機察知能力はなかなか優秀なようだ。
俺の心労も少しは減ると言うモノだ。
「では、何故俺の部屋には・・・」
もしや俺は危険度を軽視されている、すなわち男として見られていない・・・と言う事か。
彼女の笑顔に多大な衝撃を受けつつ、続く彼女の言葉に奈落の底から天上へと昇らんばかりに舞い上がった。
「山崎さんの部屋は・・・行って見たいです。二人きりでお話したいです・・・。」
駄目ですか?
頬を染めながら、うっすら涙まで浮かべて上目使いは止めてくれ。
危うく野獣永倉組長と変わらぬ自分を抑える自信が無くなる!!
「い・・・いや、。構わない。では、行こう。」
「はい」
柔らかく微笑んで、きゅっっと俺の袖を掴む彼女は、きっと太陽より眩しく俺の心を照らしている。
自室に招いて、何の話をしようか考えながら、本日の隊士内偵は取り止める事にする。
彼女の笑顔は、きっと明日の俺の活力へと繋がるから、この時間を何より大切にするべきと判断したからだ。
しかし、土方副長への報告書だけは書き上げねばなと、彼女の手を取りながら思っていた。

『本日の隊士内偵及び注意事項
二番組 永倉組長による、雪村君への過剰な剣術指導が見受けられる。
彼女の心身に危険があると判じ、永倉組長へは火急かつ速やかな粛清を執り行った。
よって、今後、永倉組長の巡察及び活動は自粛されると思われる。
予断ではあるが、雪村千鶴君への不貞を目論む隊士が近頃多いように思われる為、土方副長におかれては、彼女の護衛を私に一任して頂きたく、嘆願致す。』


「・・・・・・・・・・」
本日の内偵報告書
報告者
山崎 烝

自室で報告書に目を通していた土方は深い深いため息を落とす
千鶴の為と言うより
各々の為に、彼女への過度な接近を隊士に禁じるべきか否か
また自分も彼女への接近を控えるべきか否か
いつ影から飛んでくるやもしれぬ苦無に怯えつつ
頭を悩ませる土方であった。



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