1/3ページ目 月の光が薄く差し込む室内、俺は島田君と明日からの諜報活動の打ち合わせを行っていた。 常ならば互いの情報を重ね綿密な活動計画を詰めていく。 だがこの夜の俺は、どうにも島田君の言葉が耳に入って来なかった。 「山崎君?どうしました?今夜は心此処にあらずと言った風情ですね。」 「ああ・・・。いや、すまない。そちらの件はこのまま継続して行こう。」 「そうですね。そう言えば、原田さんが見たと言う土佐藩士を逃がしたらしい女人の探索はどうしますか?」 「・・・!!」 「山崎君?」 「・・・そうだな・・・その件はまず俺が単独で調べてみよう。島田君は長州と薩摩の動きに集中してくれ。」 「判りました。では今夜はこれで・・・。」 「ああ、明日の夜にまた。」 島田君は軽く会釈をして部屋から出て行った。 残された俺は島田君の言葉を反芻する。 『だけどあれだけ近くで見たんだ。見間違う筈がねぇ。』 『お前によく似た女に邪魔されたせいで、包囲網が崩れちまったんだ。』 原田組長は戦場に於いて冷静に的確な判断と指示の出来る人だ。 そんな人が口から出任せを言って自分の失態を誤魔化す筈はない。 ともすれば、彼女によく似た女とは一体何者なのだ? 彼女は京に親戚等の身内は居ないと言った。 だがそれは網道さんの言葉を信じるならばだ。 もしも本人に伝える事の出来ない身内がいるとしたらどうだろう? 二条城で、彼女を迎えに来たと言っていた男達。 自らを鬼と名乗ったあの者達の事も、彼女は知らない風だった。 [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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