2/4ページ目 「で?」 「いや、で?じゃねぇだろうが。こっちの台詞だ、てめぇ」 「だってだってだって!私が喚んだのは貴方みたいに目付き悪くて性格悪そうで幸薄そうな使い魔じゃなくてもっと優しそうで穏やかそうで幸多そうなの風の使い魔だったんですううううう!!!」 「悪かったな目付き悪くて性格悪くて幸薄そうで!って問題はそこじゃねぇよ!っつか撚りにも拠って風かよ!最悪だな!てめぇはっ!?」 使い魔だの下僕だの、意味不明な言葉が飛び交うのも無理はない。 少女、雪村千鶴は魔法学校に在籍する生徒で、卒業資格を得る為に自分だけの使い魔を召喚しようとしていたのだ。 使い魔の一匹も従えていないのは千鶴だけであり、兄である薫は見た目は可愛らしい千姫と言う水の使い魔を従え、同級生の平助も強面だが根は優しい天霧と言う地の使い魔を喚び出す事に成功していた。 対して千鶴は未だ一度も召喚術に成功しておらず、卒業を目の前に非常に焦っていた。 焦る余り使い魔としては最上級に当たる風の王を喚ぼうと言う暴挙に出たのだが、何故か火の王を喚び出してしまったらしい(本人曰く失敗らしいが平助から言わせれば羨ましいの一言に尽きる) 「うっうっうっ! 何でどうして火なの! 私は風が良かった! 風が良かったのに!!!」 「いや、てめぇで勝手に喚び出しといて言いたい放題だな、このガキャ」 間違って喚び出された火の王、不知火はピキリと米神に青筋を浮かべ、遥か頭上から千鶴を見下ろしながらドス声で脅しを掛ける。 千鶴が座り込んだままなので互いの頭の位置が違い過ぎる故の距離感だ。 勘違いならさっさと契約破棄して還せ、と言う事なのだが喚び出した本人が落ち込んでシクシク泣き続け全く動こうとしないのだ。 小さな子を虐めるのは性に合わないが仕方ないと至った行動だったが、ここで千鶴は不知火の予想を斜め73度位上を行ってくれた。 微妙な数字はその位不知火にとって微妙だったからだ。 「・・・今の」 「あ?」 「何か・・・もう一回お願いします」 「は?」 「今のです!さっきのまるでどこぞのヤクザか極道か破落戸のようなドスの利いた声です!もう一回!ワンスモアプリーズ!!」 ヤクザと極道って同じ業種じゃねぇかっつか人(じゃねぇけど)の声捕まえてエライ言いようだなこのクソガキ。 あまりと言えばあまりの言いように一本だった青筋が二本に増えた。 「てめぇ・・・」 「ああ!いいです!素敵!素晴らしい!」 「何がだ!てめぇ沸いてんのかっ!!」 「何て理想的! ファンタスティック! 間違えて良かったグッジョブ私!!」 「だから何が!」 しまったこいつ意味解んねぇ、もしかしたらオツムにキが付く禁止ワードな子なのか。 こうなれば本気で契約破棄するか望みを叶えて還して貰うしかない。 何でこんなヤツに喚び出されたんだ俺。 ちょっと頭が痛くなってきた不知火は、よっこいせと年寄り臭い声と共に千鶴の目の前に座り込み何だか頬を染めて幸せそうな少女の肩を掴んだ。 「おい、てめぇ。 とりあえず召喚されちまったもんはしょうがねぇ。 願いを叶えてやるからとっと言え」 そして俺を還してくれ。 しかし不知火の些やかな願いは叶えられる事は無かった。 他ならぬ自分を呼び出した本人の一言によって。 「嫌です」 「・・・・・・悪ぃ、俺の聞き違いかもしれねぇ。俺は、とっとと還りたい。だから、さっさと願いを言ってくれねぇか」 「ですから、嫌です」 「・・・さっき、間違って召喚したとかホザいてなかったか、お前」 「はい、ホザきました。因みに私は雪村千鶴と言います。貴方のお名前は火の王の不知火さんで合ってますか?」 「合ってるな、いやそうじゃなく」 「では不知火さん、これから私の使い魔としてどうぞ末永くよろしくお願いします」 丁寧に三つ指揃えて正座で頭を下げる千鶴は意外と礼儀正しいらしい。 出会って数分の言動が問題有り過ぎたのでこれは意外だった。 いや、今はそんな事はどうでもいい。 何か聞き捨てならない台詞が聞こえた気がする。 「『私の使い魔』として?」 「ええ」 「『末永く』?」 「はい、末永く」 ニッコリと。 それはもういい笑顔で千鶴は大きく頷いた。 それに対して不知火はと言えばゆっくりとその二言を噛み締め己の脳みそまで到達させた。 え? 使い魔? 何ですか、末永く? って事はあれか? 間違って喚び出したくせしてこいつは俺を使い魔として今後使役するつもりだと、そう言う事か? しかも末永く? それってこいつが死ぬまでって事? え、それ何の冗談? ここまでわずかコンマ数秒。 千鶴の笑顔から結論を導き出した知火の取った行動は。 [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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