カオス置き場

烝君と千鶴ちゃんの突撃お宅訪問隊※トリップ注意
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「え!?お嬢さん!?女!?誰が!?どこに!!」
「どこもかしこも女の子でしょー。相変わらず左之さんは見る目なさ過ぎっしょ。お嬢さん何処から来たの?ここは怖いお兄さんしかいないから早く帰った方がいいよ?」
「兄さんもこんなとこにいい人連れて来ちゃ駄目だろう?早く帰んな」
大柄な熊のような男は見た目通り少し頭が弱いらしい。
比べて小柄な(と言うのも申し訳ないような)男は頭が切れるようだ。
残る一人は大人しめながら洞察力は侮れない。
・・・が、今問題なのはそんな事ではなく。
「左之、さん?え?貴方が?そんな・・・」
「あー・・・千鶴君?ちょっと、落ち着け。悪い事は言わない、深呼吸をしてみよう」
「い・・・」
ああ、これで落ち着いてくれるなら、自分の胃壁は今ほど薄くなってはいなかった。
「いやあぁあ―――――っ!!!原田さんがっ!原田さんがああ―――!!」
そう、この千鶴と言う娘は、無類の綺麗なモノ好き、可愛いモノ好き加えて格好いいモノ好き。
要するに極度の面食いなのだ。
見た目も中身も極上の原田等は特に好みにドンピシャど真ん中らしく、その範疇から少し外れてはいる斎藤や沖田も観賞用と称して毎日眺めては感嘆の溜息を漏らしている。
観賞に値するだけの見た目と中身を持ち合わせる存在は彼女曰く希有らしい。
その希有な存在に自分も当て嵌められているのは喜ばしいが、今はその性癖がどうにもこうにも面倒事しか呼び込みそうもない。
「原田さんは、原田さんはこんな熊みたいじゃないいいい!!もっと線が細くて繊細な顔立ちと流れる赤い髪が絶妙な美丈夫なのにいいいいい!!
こんな熊男嫌あああああああああ!!!!」
「・・・千鶴君・・・君の魂の叫びはよく解った。よく解ったから頼むから落ち着いてくれ」
「ゴルァアアアア!!!!だぁれが熊男だ、この野郎!!男、原田左之助!この腹の一文字に掛けてそこまで言われて黙っちゃらんねぇぜ!!」
「いや、お前もちょっと黙ってろ、左之」
「ああああ!一文字がある!ホントの原田さん!?そんな!あの綺麗で格好よくて優しくて色気のある原田さんはどこ行っちゃったの!!」
色気のあるって・・・いや、あの人は存在自体が犯罪級だから否定はしないが・・・。
まさか千鶴がここまで原田を気に入っているとは思わなかった。
山崎は今更ながら厄介な性癖に頭が痛くなった気がする。
「なぁ、兄さん。あの嬢ちゃんの言い分だと、兄さん達の知ってる”原田”とここにいる”原田”は全く別人みてぇだな?」
「まぁ、そうですね。ついでにお聞きしたいんですが、もしや貴方は永倉新八さんですか?」
「ああ、二番隊隊長、永倉新八だ」
二番”隊”?”隊長”・・・?
「では、そちらの方は・・・?」
「あ、俺ね。藤堂平助!八番隊隊長やってまーす」
なんて対極の自己紹介を受けてちょっと目の前が暗くなりかけたのは気のせいじゃない。
未だ嫌だ嫌だとへたり込んで咽び泣いていた千鶴と言えば、その声にゆらりと顔を上げた。
「永倉さん・・・?」
「あれま、もしかして俺の事も知ってたりする?けど、その様子じゃぁお嬢さんの知ってる”永倉”ってのは、俺とはまた違う外見みてぇだな?」
違う所か・・・。
遠い目をしながら山崎は目の前の永倉と名乗った男から三歩距離を置いた。
申し訳ないとは思ったが山崎は己が可愛い。
”こう”なった千鶴に免疫のない者には酷かもしれないが、見慣れている山崎としてはなるべく被害を被りたくない。
「ちょっと兄さん、なんで離れて・・・」
「可愛いぃぃぃぃぃっっっ!!!」
「はっ!?」
永倉が三歩離れた山崎に訝しげな視線を送ったと同時に響く悲鳴のような雄叫びのような千鶴の叫び。
やはりか・・・。
また痛みが増した気がする額を抑えた山崎の目の前では、瞳をキラキラさせた千鶴が自分達が知る永倉よりかなり縮小された永倉を抱き締めて喜色満面の笑みを浮かべている。
「可愛いです!小さくて目が大きくて垂れてるとこなんかすっごく可愛い狸みたい!山崎さん!この永倉さんを連れて帰りましょう!!」
何処にだよ。
それより抱き締めた腕が首に極まってないか?
冷静に突っ込める勇気は山崎には無かった。
これがもしも藤堂ならば、「俺の何処が小さいんだ!」と憤っただろう。
または永倉ならば「千鶴ちゃんの方が可愛いぜ!」と逆に抱き締め返し沖田と自分の鉄拳制裁を受けていたに違いない。
キラキラ眩しい笑顔は溌剌と輝いて、疲れが蓄積していくばかりの山崎には手に負えそうもない。
が、どうもこの永倉は自分達の知る永倉よりも随分落ち着いた(と言うか老成した?)御仁のようだ。
「ははー?狸みたいとは初めて言われたかな。って言うか小さいのは認めるが可愛いのはお嬢さんも可愛いぜ?あと、そろそろ腕離してくれな?」
「聞きました!?聞きましたか山崎さん!!やっぱりこの永倉さんがいいです!!!連れて帰りましょう!!」
「待て待て待て!新八を何処に連れてく気だぁ!!確かに新八は可愛いがその前に俺の大事な相方だぜ!勝手に連れてこうたぁそうは問屋が卸さねぇ!!」
「いや、お前も何言っちゃってんだ左之」
「そうそう、新八っつぁんは可愛いけど!左之さんだけの相方じゃないでしょ!俺達三馬鹿でしょ!」
「いやもうお前ら二人とも黙れ。自分で馬鹿とか言うな。ついでにお嬢さんは落ち着いてくんねぇか」
左からは千鶴に、右からは藤堂に、後ろからは原田に頬を擦り寄せられ困ったように頭を掻く永倉はどこまでも男前に見える。
(この永倉さんは、俺達の知る原田さんのようだな)
「彼の言う通りだ、千鶴君。ひとまず離れて落ち着け。ついでに先に行っておくが、恐らく彼を連れて帰る事は・・・と言うか俺達が帰る事自体が困難かもしれない」
「あー・・・かもしんねぇなぁ・・・」
「えー!?何で!?と言うかさっきから気になってたんだけど、もしかして君って山崎君!?監察方の!?」
「え!?山崎!?あの山崎!?」
今度は何だろう。
先程の千鶴と同等、もしくはそれ以上のキラキラしい目で見られている気がする。
あまりにも見つめられるので千鶴までも興味津々と山崎の顔を覗き見ているが、きっと彼女の期待する何かは今この場では起こらないのではないかと予想出来る。
想像したくもない予測に山崎の脳みそが全力回避の術を打ち立てようと回転を始めた時、聞きたくもない名前を熊男が叫びやがった。
(あの原田さんなら無理だがこの原田さんなら遠慮無く殴れる気がする!!)


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