2/4ページ目 目が覚めた時、山崎が立っていたのは屯所の門前だった。 隣では軽く頭を振る千鶴がいる。 「千鶴君、大丈夫か?」 「山崎さん?大丈夫、ですけど・・・どうして私達こんな所にいるんでしょう・・・?」 それはこちらも聞きたい。 自分達は確かに屯所内の廊下で衝突したのだ。 それが何故? 不可解な現象に首を捻りつつ、ともかく中に入ろうと門を潜った。 「待て!」 「は?」 「此処は京都守護職預かり新選組屯所!許可を得ない者が勝手に立ち入る事は許されん!」 何言ってやがる、このクソ平隊士。 監察方と言う仕事柄、顔を知られていないのは仕方ないがまさか千鶴を連れていてさえ見咎められるとは思わなかった。 今や公然の秘密となっているが千鶴は幹部一同の愛玩動物として組全体に公認されている。 その扱いに若干異議を唱えたいのは山々だが、本人が受け入れているならば自分にどうこう言う筋合いはない。 「俺を知らないのも無理はないが、これを連れている時点で察してみてもいいんじゃないか?」 「これ?この坊主がどうしたっていうんだ?」 「・・・・・・は?」 「え?」 これには山崎だけでなく千鶴も目を瞬いた。 千鶴を、知らない? ここに来て漸く山崎は自分の認識に若干の修正が必要な事に思い至る。 そう言えば、今の季節屯所前には赤々しい彼岸花が満開ではなかったか。 肌に感じる風は昨日までの秋の匂いではなく、夏の爽やかさを感じさせはしないか? 屯所の門は、もう少しくすんだ色ではなかったか。 「千鶴君・・・」 「どうしたんですか、山崎さん」 「落ち着いて聞いてくれ」 「はい?・・・はい」 何事かと首を傾げる彼女を見下ろし一呼吸。 自分こそが落ち着かなくては、この非常事態甚だしい現状に対処しきれない。 ふぅと大きく空気を吸い込んで、吐き出そうとしたそこに飛び込んだのは騒がしい足音と耳に痛い騒音。 「おぅおぅおぅおぅ!新選組屯所に忍び込もうって不逞ぇ輩はどこのどいつだ、おぅ!?」 「正々堂々門から入って来るのは忍び込むとは言わねぇんじゃねぇか、左之」 「しょうがないって新八っつぁ〜ん、だって左之さんは頭で考えるより胃袋で考えるから!」 左之、新八・・・嫌になる程耳に馴染んだ、けれど全く見た事のない三人の男。 約一名随分小さいが・・・。 「え、左之さん・・・?え?え?」 「千鶴君、落ち着け」 「おやぁ?こりゃまた随分可愛いお客さんだねぇ」 「あ、ホント。可愛いお嬢さんだ。でもってそっちのお兄さんはちょーと目付き悪すぎ?」 楽しげに笑うのは、綺麗に髷を結った吊り目が人懐こい男。 口調は驚きながら、実は全く動じていないんじゃないかと思わせる小柄な男に同意して、最初にやってきた大柄な男と目を合わせている。 目付きが悪い? 十分自覚している、余計なお世話だ放っとけ。 [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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