逢魔が刻に哭く鴇



「構わん、好きにさせておけ」
「―――はい?」
「貴様は頭だけでなく耳まで悪くなったか?好きにさせておけ、と言った。判ったら行け」
「って、マジで!?いいのかよ、新選組だぜ!?鬼の巣窟だぜ!?あんなとこ居たらあいつ瘴気で弱っちまうだろ!!」
千鶴の居場所を確認した不知火は、嫌々ながらも重い足を引き摺って風間への報告の為に屋敷へ戻った。
そこで返って来たのが冒頭の台詞だ。
千鶴の性質を思えば不知火の懸念も最もで、寧ろ風間の言葉が空耳としか聞こえない。
だが当然の如く反論した不知火の頬をいつもと同じく鋭い風が掠めて行く。
それが何か等わざわざ確認するまでもない。
毎回毎回どこに隠し持っているのか、際限無く小刀が飛んで来るが回収している様子も無いのによく尽きないなといっそ感心する。
「かぁざまぁ・・・心配なら心配って言えよなぁ。俺だってこれでも心配してんだよ、連れ戻した方がいいと思うぜ?けど・・・」
「あれは来月にも俺と祝言を挙げる。そうなれば自由に出歩く事はままならんだろう。
だが俺の妻となるからには少しは鬼と人間の瘴気に慣れて貰わねばならんのも事実。
いい機会だ、害でしか無い犬共にたまには役立って貰おう」



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