逢魔が刻に哭く鴇


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「どうすんだよ、あれ・・・知らねぇぞ」
溜まらずに吐き捨て眉を顰めて瞳に剣を浮かばせる。
暫くそうしていると誰も居ない筈だった目の前に黒い影がいきなり現れた。
「うわ・・・・・・相変わらず暑苦しい奴だな!このクソ暑いのにそんな格好で動き回ってんのなんかお前位だぜ!?」
「真冬でも袖無しで平気な鈍い馬鹿に言われたくないな。どうすると言ってもどうしようもないだろ。
お前はとっと戻って事の次第を報告して来い」
「やだね」
「―――は?」
「い・や・だ!俺が報告したら俺が八つ当たりされるじゃねぇか!お前が自分でしろよ!お前の方が先に見付けてたんだから!」
子供か、お前は。
ひくりとこめかみが引き攣った気がする。
きっと自分は今凶悪な顔をしているに違いない。
それでも嫌だと顔を反らしたままの図体だけはデカイくそ餓鬼は動く気がないようだ。
どうすれば動く気になるかなど解り切っていたがその為に自分が動くのも馬鹿らしい。
「解った」
「へ?―――って、お前自分で行くの?マジで?」
「姫の居場所を知っているのは今の所は俺とお前だけ。だがお前が嫌だと駄々を捏ねるなら俺が行くしかないだろう。
心配するな、風間には俺から説明しておいてやる。
『姫から目を離した上に見付ける事も出来ずに俺の手を煩わせた』不知火の弁明など、簡単な事だ」
「て・・・め・・・っ!!」
「無能さを嵩に打てる手も打とうとしないのは誰だ?俺は俺でやるべき事がある。これ以上余計な手間を増やすな」
「む・・・・・・かっ・・・つっく・・・っ!!!」
眇めた目で睨まれて、正論をぶつけられては太刀打ち出来る訳もない。
自分の方が長身で、見下ろす立場なのに何故かこっちが見下ろされている気がする。
元よりこの男に口で勝とうと思う事に無理があるのか。
決して愚鈍ではない不知火ではあるモノの、この男にだけはどうしたって勝てはしないと背を丸めて諸手を挙げた。
「ムカつくがその通りだ、クソったれ。風間には俺から報告しに行く。その後どうするか指示はあいつが出すだろうから、それまで千鶴を頼む」
「言われずとも。ではもう行く、お前と居る所を見咎められる訳にはいかないからな」
「ああ、じゃあな」
パシッと互いの手を叩き合わせ、背を向け別々の方向へと駆け出す。
面倒な事になっているし、どうやって連れ戻すか考えると頭が痛いが、それでも千鶴の傍にあいつがいるなら大丈夫と思えるから不思議だ。
「口も性格も悪ぃけど、腕だけは立つからな、あの野郎」
悔しいけれど、本気で打ち合って勝てるかどうか解らない。
だからこそ信頼も出来るし千鶴を任せる事も出来る。
そこまで考えて不知火はゲロっと苦虫を噛み潰したように顔が歪んだ。
ああは言ったがこれから風間に報告する内容を思うと気が重い。
出来るならやりたくないがそれも自分の役目と割り切るしかないだろう。
(俺、明日のお天道さん拝める気がしねぇわ)
はぁっと重く深く長い溜息を吐き出しながら、それでも主の元へと駆け付けるべく力強く地を蹴った不知火だった。






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