薄桜鬼

ゆかり様リク〜山崎×千〜
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【in the rain】


ふと空を仰ぎ見ると、今朝まで見当たらなかった黒雲が陽の光を遮り影を作り出している。
俺はお遣いで今は屯所にいない小柄な背中を思い浮かべ、踵を返した。
「なぁ、千鶴大丈夫かなぁ?」
「さっきから千鶴千鶴って、五月蝿ぇぞ、平助。そんな心配なら迎え行きゃいいじゃねぇか」
「だぁって隊務中に抜け出したら切腹〜〜!ってなるじゃんか!」
広間では藤堂さん達が顔を付き合わせ騒がしい。
特に何をするでもなく茶を啜っている様子からすると、昼からの巡回前の休憩と言った所か?
「んじゃ諦めて大人しく待ってろって」
「けどさぁ!何か雨降りそうじゃん!絶対傘とか持ってってないぜ?濡れちゃうだろ!?」
「ギャアギャアやかましい!オチオチ一服も出来やしねぇじゃねぇか!何騒いでんだ!」
「おぅ、土方さん。いや、平助がな、千鶴を迎えに行くって五月蝿ぇんだ」
「ちょ、左之さん!まだ迎えに行くとは言ってないだろ!雨に濡れないか心配してるだけじゃん!何で余計な事言うかなぁ!?」
「はぁ?千鶴ぅ?ああ・・・それなら問題ねぇ」
「何で!傘持ってってないだろ!?風邪引いたらどうすんだよ!」
副長に食ってかかる藤堂さんの言い分を、副長も原田さんも苦笑を交えて聞き流している。
藤堂さんには申し訳ないが、俺は静かに膝を折って副長の前に進み出た。
「副長、今から一刻程暇を頂いてもよろしいですか?」
「山崎君か、構わないぜ。一刻と言わず二刻程ゆっくりして来たらどうだ?」
どこか楽しげに俺を見下ろす副長に、小さな笑みだけ返した俺はきょとんと大人しくなった藤堂さんに向き合った。
「そう言う事ですので、心配なさらなくても大丈夫です。ありがとうございます。では・・・」
蛇腹片手に外に向う俺の背中に、更に五月蝿くなった藤堂さんが何か叫んでいたけれど知った事じゃない。
余計な事に構けて彼女に風邪など引かせてたまるか。

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