2/5ページ目 「では、私に何か頼みたい事はありませんか!?」 「だから、無いと・・・」 「嘘言わないで下さい!ずっと何か言いたそうにしてるじゃないですか!でも言い難そうなのは何でですか? もしかして羅刹に関する事ですか?また発作が酷くなってるんじゃないですか?血が必要なのでしたら・・・」 「違う!吸血衝動はほとんど抑まっている!それじゃない!」 「それじゃない、と言う事は、どれですか?私に言えないような事ですか?」 「それも違う!言えない・・・のではなく・・・言い難い、と言うか今更と言うか・・・いや、しかしこれは必要なのであって決して他意ある訳でもなく、いや、しかし・・・」 「あのぉ・・・烝さん?」 「な、何だ!?」 千鶴の目の前で薄っすらと頬を染めてブツブツ独り言を言い始めた烝は一瞬彼女の存在を遮断していたらしい。 胡乱な視線に晒されて珍しく狼狽した山崎に、思わず噴出してしまったのも仕方ないだろう。 「何だって、こちらの台詞ですよ、烝さん!もう、今確実に私の事忘れてましたね?それで何なんですか?言い難いって・・・あ、もしかしてやっぱりお金の問題ですか?」 「いや、それに関しては全く問題ない。網道さんは物持ちも趣味も良かったんだな。随分助かっている」 「そうなんですか?私にはよく判りませんが・・・じゃあ、一体何が問題なんですか?」 きょとんと目を瞬き見上げる千鶴の姿は薄い紅色の羽織に白い袴。 高く結い上げた髪が風に揺れ随分愛くるしいと思う。 思うが、しかし、その姿は京に居た頃から変わらず男装のままなのだ。 これから二人は近いうちに祝言を挙げて夫婦にもなろうと言うのに、男装のままでは問題有りまくりな気がする。 山崎としては出来れば男装を解いた千鶴と共に街に下りたいのだが・・・未だに二人で買い物に行かないのはそう言う理由だと千鶴は気付いては居ない。 「烝さん?」 だが何時までも先延ばしにしても仕方ないのも事実。 意を決したように山崎は千鶴の肩をガッシリ掴み真摯な面差しで口を開いた。 「千鶴、着物を脱いでくれ」 「へ・・・」 「あ・・・」 「す、烝さんの馬鹿ぁぁぁぁ!!!」 「違―――う!誤解だ千鶴!待て!茶碗を投げるなぁぁぁ!!」 焦る余り色々な説明をすっ飛ばした山崎にも非はあるだろうが、手当たり次第に食器や土瓶を投げる千鶴もどうだろう。 羅刹でなけらば致命傷となり得るモノが色々と飛んで来た気がする山崎が、息も絶え絶えに事の次第を説明する事に成功したのはそれから半刻も後だった。 [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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