1/4ページ目 秋の色も濃くなり、吹き抜ける風が若干肌寒い日が続く。 俺は久しぶりの非番を副長に戴き、折角の休みに雪村君と兼ねてより約束していた買い物に付き合う事にした。 彼女を探して中庭に足を向けると、聞こえてくる朗らかな笑い声と穏やかな声音。 この声は・・・。 「本当にいいんですか?井上さん」 「ああ、構わないよ。私は永倉君達に比べると剣術指南で師事したいと熱心に言ってくる隊士も少ないからね。一日位休んでも問題はないさ」 「ありがとうございます!」 「どこに行かれるんですか、井上さん」 「え・・・あ!山崎さん!?どうされたんですか?今日はお仕事じゃないんですか?」 「ああ、久しぶりに非番を戴いたので、君と約束していた買い物に行けるかと・・・」 「おや、そうなのかい?だが彼女は私と出掛ける事になってねぇ?折角の休みなんだから、たまにはゆっくりしたらどうだい?」 期待に瞳を輝かせている(と、思いたい)雪村君の肩に、普段見た事のない感情の読めない笑顔で井上さんがゆっくり手を置く。 「いえ、お気遣いありがとう御座います。ですが俺は以前から約束していましたし、ゆっくり二人、で出掛けて来ます。井上さんこそ休まれてはどうですか?」 肩に置かれた手を角が立たぬように外しながら彼女を引寄せると、若干頬の赤みを増した彼女が驚いたように見上げてきた。 殊更優しく微笑みを浮かべて軽く頷いて見せると、途端にぱっと笑顔を咲かせるも、すぐに萎れた花に向いまたやんわりと声を掛ける。 「だが、井上さんと約束してしまったなら、共に行くのもいいだろう。ですよね?井上さん」 ここで引いてなるモノかと、気負いじみた目で問い掛けると、ピシリと空間に亀裂が走った気がした。 [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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