薄桜鬼

真田丸様リクエスト〜左×千〜
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「情ねぇな・・・。俺が、不甲斐無ぇだけなのに、お前に・・・惚れた女にそんな顔させちまうなんてな」
触れ合う事は叶わないから、せめて体温だけでも感じたいと彼女の手の横に自分の手を置く。
「先生のせいじゃない、です・・・。教師と生徒のままでいいからって、そう言ったのは私ですから」
気が強い処がある癖に、何処までも自分の立場を慮ってくれる千鶴はそう言って笑う。
二人の関係がバレて困るのは原田だからと、自分の言葉に素直に頷いてくれた事に安堵しながら、それでいいのかと問い詰めたい理不尽な自分。
比べて、自分の気持ちより原田の気持ちばかりを優先する千鶴。
微かに触れる小指を擦り合わせるだけで、嬉しそうに綻ぶ顔が愛しいと思う。
「お前は、無欲過ぎる。もっと我が儘になってもいいんじゃねぇか?」
「無欲、ですか?そんな事ないですよ?先生が思ってるより、凄く欲張りですもん」
我が儘を言われて困るのは自分なのに、それを強請ってしまうのは自分の弱さ故か。
小指だけでなく、全身で彼女を包み込みたい欲求を堪え切れない自分への甘えなのか。
「だって、欲張りじゃなかったら先生に告白したりしませんでした。
ずっと言わないでいようって思ってたのに、我慢出来なかったんです。先生が好きですって、伝えたくて・・・。
先生を困らせてしまいました」
『俺はお前を生徒としてしか見てねぇよ』
告白されて、返した言葉は素っ気無さ過ぎるモノだったのに、めげない彼女はいつもいつでも自分に笑顔を向けてくれた。
いつだって全力で原田への想いを示してくれた。
そんな彼女への自分の正直な気持ちに気付けなかったのは、自分が彼女より弱いからだろう。
認めたくなくて、蓋をした。
なのに、無理矢理でなくそっと労わるように少しずつ蓋を開けてくれた彼女を、守りたくて大切にしたくて、今すぐにでも自分のモノにしたいのに、出来ない。
「ごめんなさい、先生。でも、私・・・我慢出来なかったんです」
先程と同じ台詞を、真っ直ぐな視線に乗せて千鶴は紡ぎ出す。
「先生が、私以外の誰かに笑うのかなって・・・他の、もっと綺麗な人の隣に立つのかなって思ったら、我慢・・・出来なくて。先生の笑顔も、隣に立つ事も、独り占めしたいと思ったんです。
だから、ごめんなさい。私・・・駄目だって判ってたけど、先生が好きって気持ち、黙ってられませんでした」
「千鶴・・・お前・・・」
原田が同じ様に感じた事を、千鶴も同じく感じ、堪え切れないからと実行に移した。
真っ直ぐで淀みない視線に釘付けになった原田は、思わず漏れる苦笑と共にもう一度千鶴の頭を撫でる。
「全く、敵わねぇよ、お前には・・・。どうしたって俺はいつもお前には勝てやしねぇ」
くつくつと笑いを噛み殺し、顔を伏せたまま髪を撫でる原田に不思議そうに首を傾げる千鶴は、微動だにせずされるがままだ。
カックンカックン揺れる頭に、ついに噛み殺し切れない笑いが爆発した。
「く、くっくっく!はははは!お前、少しは嫌がれよ、首が馬鹿になっちまうぞ!?あっははは!」
「だ、だって・・・!先生に触って貰うのは、嫌じゃないですもん!でも、笑い過ぎです!!」
「怒るな怒るな。可愛い顔が台無しになっちまうぜ?悪かったよ、馬鹿にした訳じゃねぇから、心配すんな」
腹を抱えて大笑いする原田に、ぷっくり頬を膨らませた千鶴はそれでも嬉しそうだ。
そんな仕草にさえ愛しさが込み上げて、漸く収まった笑いを引っ込めた原田はふと真剣な眼差しを向ける。
「先生?」
「2年・・・だ」

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