薄桜鬼

円様リクエスト〜斎×千〜
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頭に浮かんだ言葉とは別の言葉を吐き出したのは、それを言ってしまうととても惨めでとても寂しくなってしまうから。
今でも充分寂しいのに、これ以上なんてきっと泣いてしまう。
だから選んだその言葉は、何故か一層寒さとか寂しさを私に染み込ませてしまったようだ。
少しずつ潤む視界に涙が零れそうなのは判っていたけど、それを拭う事もせずに中庭の片隅に座って降り積もる雪を見ていた。
寒いのに、凄く寒いのに、こうしているといつかあの白を思わせる人が私を暖めてくれないか、なんて有り得ない事を思うのは、やっぱり雪を重ねてしまう斎藤さんにこそ暖めて欲しい願望の現れなんだろうか?
「くしゅ・・・っ!」
いい加減にしないと風邪を引いてしまうなぁと冷えた手に息を吹き掛けると、ふわりと優しい温もりが私を包んだ。
「何をやっている。今は冬の最中で雪まで降っている。凍えて風邪を引きたいのか?」
「さ・・!?」
「どうした。何かあったか」
「何か、って・・・」
信じられない。
どうして?
土方さんと大阪に出張に行ってる筈なのに?
「千鶴?」
目の前で怪訝そうに眉を顰める人が本物なのか、逢いたいと願い過ぎて見ている幻なのか判らなくて、思わず頬に指を這わした。
指先に触れた白い滑らかな肌は氷のように冷え切っていて、やっぱり幻なのかもと思う。
それでも、例え幻でもとても冷たい頬を暖めたくて、両手で包み込んで撫でていく。
斎藤さんは普段鋭く研ぎ澄まされた瞳を大きく見開いて私を見下ろして何も言わない。
普段とは違う表情に、やっぱり幻なんだと思ったら余計寂しくなってしまった。
「何故泣く」
「だって・・・どう頑張ったって、私は一番にはなれないですから。一番に、なりたい訳じゃないんです。新選組も、土方さんも大切だって解ってます。それが斎藤さんなんだって。
でも・・・でも、少し位覚えてて欲しかったんです。ちょっとだけでもいいから・・・」
堪えようとしても瞳から零れてしまう滴を私の頬を挟み込んだ斎藤さんの指が拭う。
あれ?
指が、暖かい?
「斎藤、さん?」
「何だ」
「さい、とう・・・さん?」
「だから何だと聞いている」
「ほん・・・もの・・・?」
「千鶴?どうした?こんな処に長く座っているから、冷え過ぎて視界が曇っているのか?」
幻だと思っていた斎藤さんは、頬を拭っていた手で私の指先を握って両手で包みこんでくれる。
そうだよね。
こんなはっきりした幻なんか、ある筈ないのに、どうして幻だなんて思い込んだんだろう?

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