1/4ページ目 【爆ぜる温もり】 季節は冬。 私が過ごす京にも白い雪がちらちら降りしきり、屯所の中庭はすっかり真っ白く染まってしまった。 空はどんより曇って昼間だと言うのに寒さが身に凍みる。 私は自分の気持ちと同じような色に染まる空を見上げ、小さく溜息を零した。 考えてもどうしようもないと判ってはいるのだけど・・・。 でも、やっぱり。 「やっぱり、羨ましいな・・・」 ぽつんと声に出して、改めて寂しさが募る。 仕方無い事だとは判ってるし、それがあの人のお仕事だし、隊士でもない私がそれに否やを唱える事なんて出来る筈もない。 けれど、やっぱり思ってしまう。 寂しいって、思ってしまう。 少しずつ降り積もる白い雪は、今は屯所にいないあの人を思い起こさせる。 どこまでも真っ直ぐで潔癖で、幹部の誰より自分に厳しく副長である土方さんに忠誠を誓う、三番隊組長の斎藤一さん。 先日、深く積もった雪の中、二人で作った雪うさぎは朝には溶けてしまっていた。 「また、雪が降れば作ればいい。共に・・・」 少しだけ頬を染めて、照れ臭そうに言ってくれたのは斎藤さんだったのに、昨日の昼から降り始めた雪にまた一緒に雪うさぎが作れると喜んでいたのは私だけだったらしい。 「副長の大阪出張へ、護衛も兼ねてお供をさせて戴く事になった。帰りはいつになるや判らぬそうだ」 空から落ちる雪を尻目に、淡々とそう言った彼が少しだけ憎らしかった。 判っていたけれど。 「ううん。ホントは、判って無かったんだろうな。どうして私っていつもヌケてるんだろ・・・」 彼の一番が新選組で、土方さんで、私は・・・多分二番目でもないんだって、いい加減諦めればいいのに。 それでも諦めが付かないのは、二人で過ごす時の彼の目がとても柔らかく温もりを帯びて見えるから。 もしかしたら私と同じように思ってくれてるんじゃないかって。 「雪、溶けちゃうな」 [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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