1/3ページ目 【Making from love】 冬休みもそろそろ終焉を迎え、正月にゲットしたお年玉を手に浮かれる学生の姿もまばらになった街のとある公園のベンチ。 市街地から少し逸れたその公園のベンチに、端正な姿形の男が一人。 長い脚を持て余すように組みながら、手には文庫本が収まっている。 眼鏡を押し上げ見下ろすそれは、しかし先ほどから1ページも進んではいない。 「少し遅いですね。寝坊でもしたんでしょうか?」 公園に設置された時計の示す時刻は午後2時20分。 待ち合わせに遅れた事など一度もない待ち人を想い、知らず眉間に皺が寄る。 「先生!」 近くまで様子を見に行こうと立ち上がった途端、今だ成長途中を思わせる高い声が聞こえた。 「お待たせしました・・・!遅れて・・・す、すみませ・・・!」 ベンチの傍まで走り寄り、大きく肩で息をする彼女は額から汗を流し真っ赤な顔で詫びる。 その様子にただの寝坊ではないと察した彼、先生と呼ばれた男はにっこりと見た目だけは優しげな笑みを型作った。 「そんなに汗を掻いて・・・どこから走って来たんですか?たった20分の遅刻に目くじらを立てる私ではありませんから、まず落ち着きなさい」 穏やかな声も優しげな笑顔も、傍から見ればどこまでも寛大に見える事だろう。 だが、彼女はその笑顔に隠された本性を既に知ってしまっている。 だからこそ思わず口の端がヒクリと引き攣り後ずさってしまったのだが、どうやらそれは彼のお気に召さなかったようだ。 「千鶴君?どうしましたか?何か、ありました?」 ありました?と疑問形であるにも関わらずどこか確信めいた問い掛けに、益々彼女の頬は引き攣っていく。 (これは・・・怒ってる!物凄く怒ってる!!) それは判るのに理由が判らない。 確かに遅刻した自分に非があるのは判っているが、常の彼ならばこの程度でここまで怒る事はないのだ。 ある一定の条件下以外では。 [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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