薄桜鬼

薫様リク〜山崎×千鶴〜
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「・・・?雪村君・・・?まさか、もしやと思うが、怖い・・・のか?あれが」
あれ、と外で眩い光を放ち先ほどより克明に聞こえる音を指差すと、やはり真っ青なままの彼女は激しく被りを振った。
「こ、こここ怖い訳じゃありません!!に、にが、苦手・・・!な、だけっ・・・です!っきゃあああ!!」
「おい?」
ドォンッ!
大きく響いた雷鳴と振動が、屯所丸ごと震えたように座した脚にも伝わる。
小さく縮こまっていた彼女にもそれは充分感じられたようで、鋭く悲鳴を上げてガバッと蹲ってしまった。
「何で・・・怖いんだ、あんなものが・・・」
「こ、こぉここ怖い訳じゃありませんってば!!にが、苦手なだけです!!」
怖い事と苦手な事は、同じではないんだろうか?
若干呆れながらそんな事を思う俺に気付いたのか、蹲ったままの彼女は恨めしそうな視線を向けてくる。
「や、山崎さんは、苦手じゃない、から・・・判らないかもしれませんけど・・・!」
「いや、雷が目の前に落雷したのを見て以来、その恐ろしさは充分理解しているつもりだが・・・」
「ら、落雷!!い・・・・いやぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ちょ・・・雪村く・・・!!」
俺が自分の失言に舌打ちするより早く、空からは盛大な雷光と雷鳴が交互に降り注ぎ、耳を劈くそれに彼女のどこかの限界点が突破したようだ。
気が付いた時には俺は畳みに強か後頭部を打ち付け彼女に押し倒されると言う失態を演じていた。
(何故こんな事に・・・)
内心冷や汗を掻いても現状が変わる訳もなく、一先ず俺の胸に顔を埋めて震える彼女を退かせうとするのだが、その度稲光が空を走り雷鳴は鳴り止まない。
カタカタ震える彼女はもう声も出ないようで、突っ伏している為窺えない顔にはきっと涙の川が出来ているんだろう。
(たかが雷で・・・しょうのない)
今度こそ隠しもせずに溜息を吐き出すと、漸く事態に気付いた彼女が息を飲む気配が伝わる。
「す、すみませ・・・!ごめんなさい!山崎さん・・・!私、わざとじゃなくて・・・っ!!」
「ああ、判っている。わざとだとしたら俺の審美眼に自信を失うところだ。・・・怖い、じゃなくて苦手なんだろう?あれが」
今だゴロゴロと唸りを上げる空と彼女に交互に視線を移して、厭味でなく苦笑を盛らすと、真っ赤に染まった頬がコックリ頷いた。
「駄目、なんです・・・小さな頃から凄く、こわ・・・怖く、て・・・」
「幼い頃から、か・・・それなら・・・仕方ないな」
「わ、笑っても、いいです、よ・・・じ、自分でも、おか、おかし・・・きゃぁ!!」
「っと・・・」
雷鳴の遠のいた間にと起こした上半身に、再び大きく轟いた烈音に強張った彼女の腕がしがみつく。
触れるだけで壊してしまいそうなそれに戸惑いながら、決して不快ではない自分にも驚いた。
だからと言っていつまでもこのままで居る訳にもいかない。
どうしたものかと視線を巡らせ、押し倒された拍子に放り出された上掛けが目につく。
痛い程抱きつく彼女の肩を撫でさすりながらそれに手を伸ばし、次の雷鳴が響く前に頭から彼女を覆った。


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