薄桜鬼

薫様リク〜山崎×千鶴〜
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【雪起こし恋起こし】


冬が深まり京の町にも年の瀬が迫ってきた。
皆が忙しく年越し準備に追われる中、俺はいつもと変わらず監察方としての仕事に明け暮れている。
「今年は雪が遅いな」
「何がですか?」
ボソリと呟いた言葉が届いていたのだろう。
一人自室に篭もり書面を書いていた俺に、茶を運んで来てくれた雪村君が小首を傾げて問うて来た。
「雪だ。今年は通年より遅い。こんな年は特に寒さが増すようだから、君も体調には気を付けるんだ」
「ああ、そう言えば、去年の今頃は一面真っ白でしたもんね」
丁度一年前を思い起こしながら微笑む彼女にとって、この一年は決して穏やかではなかっただろうに。
それでもこんな風に笑える彼女は、自分達が思うよりも強いのだろう。
(でなくては、あの副長からして懐柔されたりしないだろうが)
彼女に殊更甘い局長や幹部の面々を思い起こせば、苦笑も漏れようと言うものだ。
そんな俺に訝しんだ瞳を向ける彼女は、そこでビクリと肩を跳ねさせた。
「・・・?どうした?」
「あ、の・・・山崎さん?」
「なんだ?・・・雪村君?顔色が悪いようだが・・・言った傍から体調が悪い訳じゃないだろうな?」
「いえ・・・あの・・・山崎さん・・・!あの、今、あの・・・!外・・・外・・・で・・・」
「外?」
見る間に青ざめ更には小さく震えだした様子は尋常ではない。
何事かと耳を澄ませば遠くから微かに聞こえるのは・・・。
「・・・雷?」
「・・・!や、やっぱり・・・雷・・・ですか!?」
「ああ、そうだろう。この時期に鳴ると言う事は、雪起こしか?やっと雪が降るかもしれない」
「ゆ、雪起こし・・・!って、何ですか!」
「は?ああ・・・雪起こしと言うのは・・・いや、それより雪村君?本当に大丈夫か?顔が雪より白くなってるぞ?」
「いえっ!な、ななな・・・!何でも、ありませ・・・!!きゃあっ!!」
膝を近付け顔を覗き込みながら、再度大丈夫かと問う俺に被りを振るより前に、外では空が僅かに光る。
続いて聞こえた雷鳴に、本当に雪も近いなとぼんやり考えた俺の耳に雷より鋭い悲鳴が届いた。

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