heart

【教えてくれたもの】

「お母さん…乳癌だって…」
らしくない母親の声だった
目や口から、「笑」という
表情を探した僕は
強がりながら諦めた…


僕が高校卒業を
間近に控えたある日
妹と母親の二人は
いつものように二人だけで
コソコソと話をしていた

「またか…」

繰り返し見る光景に
飽き飽きしながらも
二人仲良ければいいか…と
僕は、前向きな我慢を
淋しい心に覚えさせた

そして、数日が経った頃
母親と僕、二人きりに…
ここであの言葉を口にする


「お母さん…乳癌だって…」

僕は平然としたまま
何かを隠すように
なぜか言葉を発してた

「乳癌は手術で、ガンを
取っちゃえば治るでしょ」

無知な訳じゃない
そんな
簡単な訳ない事ぐらい
十分に知っていた

話を聞くと
ガンの進行度(=ステージ)
は、5段階のうち
4〜5だという…
1は早期で、5はもぅ…
そういうものらしい
色々な項目で
ステージを検査した結果
すべてが4以上で
もう、ガンになって
少なくとも
5年は経ってるみたいと
黙々と説明された…
今のところ、運良く
転移はないという

不安と安心が入り交じり
心に黒色の安心が
頭に白色の不安が
互いに消しあい
僕は灰色に染まっていく…

そんな時、母親は続けて
妹とのやりとりも
初めて明かしてくれた

乳癌の特集をテレビで見て
試しに触ってみたら
しこりのような違和感が
あったようで、妹にも
確認してもらったそうだ

妹は

「何でもっと早く
言わないのっ……」

妹は強く、怒ったように
こう言ったらしい
あれだけ仲良くて
いつも二人で
どこ行くにも一緒だった
妹が怒るのも
分かる気がする

僕はその夜
話に頷く事しかできなった
そんな自分が情けなくて
寝たふりをしながら
母親を祈り
寝返りをしながら
こぼしそうな涙を
堪えてる子供がいた

きっと大丈夫…と
ポジティブに考えても
心に嘘はつけなくて
泣いてもいいはずなのに
人は何で
涙を我慢するのだろう…
そんなことを考えながら
心の思うままの
自分でいればいい…と
今を落ち着かせて
眠りについた

そして、時は過ぎ
母親の入院日を迎えた

妹のテキパキした姿に
想う気持ちを感じ、
母親の落ち着いた姿に
強さを感じた僕

何をどうしたらいいのか
僕には一切わからず、
ひたすら見守る事しか
出来ずにいた。

相談事はすべて
妹と二人だけで
していたから…
言い訳という名の
もどかしさと独り闘い
消えたテレビ画面に映る
僕に向かって
存在の意味を確かめた

病院についても
二人の表情は変わらず
僕は二人の背中を
追うようにして歩いてた
そのことに気付いたのは
あの時
心に映し出された何かを
探してる時でした…

僕らは2階にある病室へ…
同階に、手術室もあった

母親は窓際のベッドで

「いよいよ明日か…」

どこかわくわくしてる様に
感じられた
妹と母親の会話を
片耳に入れながら
僕は窓から外を眺め
意味なく風を探してた

手術当日
僕、妹、祖父の3人で
ベッドの周りを囲んだ
何を話してたか
一切覚えていない

記憶にあるのは
無音の映像だけ…
看護婦さんが
時間を知らせに来て
ベッドに寝かせたまま
手術室へと運んでいく

手術室の扉が開いて
中へと入っていく時
どこか遠くへ
行ってしまうかのようで…
「頑張れっ」よりも先に
「お母さん…」と
心はささやいてた…
残された3人は
告げられた予定時間を
3人別々の場所で
それぞれの思いで
その時を待った

僕は一人、外へ…
寒さを感じないのは
もうすぐ春だからですか?
それとも
僕が思い出に
浸ってるからですか?
今はどこにいても
お母さんを祈るばかりで…
どこにいても
記憶の映画が映ってた

よく怒ってくれたよね
よく褒めてもくれた
小さい頃は
抱っこしてくれた
おんぶしてくれた
抱き締めてくれた
温かかったの覚えてる
中学の時、一人だった時も
一生懸命、心配してくれた
高校合格の時も
「よかった」と
泣いてくれたんだってね
いい学校じゃないのに…
大げさなんだよ…

お母さん達が離婚する時

「お母さんに付いてきて…
お腹痛めて
産んだ子だから…」

言われなくても
そんな顔されたら
付いていくよ
真面目な顔で言ってても
目は潤んでるだもん

ドジでマヌケで
短気なくせに明るくて
よく笑う人で
バカの付くぐらい
お人好しで…
そんなお母さんを
見捨てるわけないでしょ
ずっと守ってくって
離婚するずっと前から
決めてたんだから

一つの夢だから
あなたを、家族を
幸せにしたいんだよ
聞こえてますか?
お母さん…

そんな事を思っていたら
時はすでに
予定終了時刻を
迎える寸前だった
僕は、院内に戻り
ロビーにいた二人と
合流して、手術室の前へ
予定より30分遅れで
赤いランプが消えた

出てきたお母さんは
当たり前だが
ぐったりとした様子で
病室まで運ばれていく…
目や口が半開きの中
戻ってきた母の視線は
僕らの方に向けられていた
それを見た僕は
たまらなくなって
妹と祖父は
除去した癌を見てから
母の病室へと向かったのに
僕は見ることなく
すぐ、階段を降りていった

その階段の途中で
僕は一人涙した
弱さが一気にあふれ出て
視界がなくなるぐらい…

だけど、泣き止んだ時には
なぜか視界が広くなって
前が良く
見えるようになっていた

僕は上を向いて
階段を一気に駆け上がった



お母さんが教えてくれた

「優しい思いやり」

今はまだまだ未熟だけど
お母さんのような
優しい思いやりを
持った人になれるように
これからずっと…頑張るよ

だから、長生きしてね…




家族の形を変える事より

家族を想う気持ちの方が

大切なんだと気付いた

人だってそう…

相手を変えるのではなく

まずは自分が

相手を想うこと

始まりはいつも想いから…







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