heart

【ばあ-強がり涙-】

太陽が歓迎するかのように
家を黄金色に包み込む…
そのせいか、やけに暑い

じいが逝って初めての朝
僕ら4人は
4つの思いで会話する
その一つ、ばあの思いは
他の3つに無いものだった

ばぁに真実を話す息子と
娘である母
すると、ばぁは
「俺は、○○(母)と
○○(僕)がいればいい」
と、冷たく、そっけない…

あれだけわがまま言って
何でもやってもらって…
脳梗塞をして
リハビリの時も
じぃの優しく厳しい
支えがあったからこそ
今もこうして
歩けるようになったのに…

ばぁにとって
歩けることは
じいが残してくれた
最大の財産じゃないのか…
と、僕は信じられなかった

けど、……………………




その日から
カレンダーを
2枚めくったある日
ばぁの様子に
変化が見られるように…
毎日のように
誰かに電話を
かけるようになり
1日寝ているといった日が
徐々に多くなった…

淋しいのかな…と
家族で思うように…
そんな雰囲気のなか
あの日が来る…

急に立てなくなった
立つまでに
30分はかかっただろう
しかし
それだけではない…
口調もはっきりしないのだ

電話をかけるといって
持ちだしたティッシュ箱
一生懸命ボタンを押す
さらには、自分の息子を
自分の兄貴だと
思い込んでいる…

僕は恐る恐る聞いた
「俺が誰だかわかる?」

ばぁは静かに
首を横に振った
僕は、じいの写真に
目を移す
「じい…
見守ってやってくれ…」

僕はその場にいた妹と
顔を見合わせ
脳梗塞発症時から
ずっと通院している病院へ
連れていった…




実はこんなことがあった

じいの生前は
じいが連れていっていたが
亡くなってからは
主に僕が
その役割を担っていた

いつもは一人で
診察室へ行っていたが
じいの死から一ヵ月半後
初めて、ばぁと一緒に
診察室へ入った時
主治医から聞かされた…

「診察される度に
お父さんのお話をされて
話ながら泣いていました…
泣きながら
生前の出来事や思い出を
沢山教えてくれました」

何強がってんだよ…
僕とお母さんが
いればいいなんてさ…
淋しかったんだね…

毎日けんかしてたもんね
じぃの助手席に乗って
よく出かけてたもんね
二人で笑ってたもんね

二人だけが
知ってる思い出と
僕が知ってる思い出に
じいはもぅいないんだ…と
再確認させられた

先生が続けて
話し掛けたりして
あまりぼーっと
させないようにと
言っていた


このことを
病院に向かいながら
思い出していた
注意はしていたが
小さなサインを
見落としていたようだ…

病院につくと
やはり歩けない為
車椅子に座らせた
こんな時に限って
待ち時間が長く感じる

病院に、若干の恐怖心を
感じながら
時計を無駄に見続けた

やっと診察室に入ると
僕は今日の出来事を
早い口調で説明する

診察の結果
うつだろうと診断された
先立たれた老夫婦に
よく見られる症状のようだ

処方された薬を手に
未来を想像する、が
その日の空模様のように
くもって太陽が見えない

僕自身、胸の違和感や
血痰、嘔吐の症状が
あったため
精神的にも、肉体的にも
ギリギリだったせい…と、
自身を理由に言い訳した

この日から始まった
クリアのない
ロールプレイング

薬があわず
一時寝たきりになったり…
言っている内容が1%から
順に70、80%と
わからなくなっていく
じいの遺骨を
逆さまに
していたこともあった…

それでも
元の性格の自己中心で
わがままな部分は
残っているため
見る側も薬の影響なのか
元の性格なのか
判断が難しい…と
対応に迷いが生じる



薬の調節をしながら
少しづつ以前の生活を
忘れていく…
デイサービスに
通わせたりと努力はしたが
現状を維持することで
みんな精一杯…
苦とストレスとため息で
家も心も潰されそうだった


約半年たった頃
精神科への受診を
勧められた
うつの診断が認知症へ…

病名は、
レビー小体型認知症
特徴的な症状として
幻視が見られるようだ

カーテンが人に見える
布団の模様が虫に見える
洗濯カゴに入った
洋服を見て
「かわいいね、いくつ?」
と話し掛ける
自分の周りを
うさぎが
走り回ってたと言う
妹の子供(実際はいない)
かわいいと言う

あげだしたらキリがない…
覚悟はしていたが
現実は厳しかった
これらを言ってるのを
騒いでるのを
聞いてるだけで
気が滅入る…

毎日、びしょ濡れの
紙パンツ交換も
夜中の徘徊も、奇声も
僕らへの嫌がらせも…
ニュースで
介護疲れによる犯罪を
耳にして
家族なんだから
面倒見るのは当たり前…と
思っていた僕は
恥ずかしくなった

結局、精神科への受診も
一度きりで
今現在は
薬の調節をしながら
ストレスと共に生きている


幼い頃、初孫の僕を
じいとばあは
すごく可愛がってくれた
その恩返しを…
という気持ちで
ストレスと戦っている


認知症さん…

記憶を奪わないでください
人格を奪わないでください
家族を奪わないでください
心を…奪わないでください

僕は、家族は

あなたと戦います…







w友達に教えるw
[ホムペ作成][新着記事]
[編集]

無料ホームページ作成は@peps!
++新着ブログ記事++