馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

プレート固定の基本 最初のスクリューを入れる位置

2024-04-30 | 整形外科

プレート固定を教えに行くと、

「最初のプレートスクリューはどこへ入れますか?」

「プレートのどこから固定していきますか?」

と訊かれる。

成書、手引き書にはどう書かれているか?

これは AO principle of Equine Osteosynthesis からの図と文。

プレートを骨の表面に合わせて整形 contour したら、骨折面からだいたい1cmのところの骨に3.2mmドリルで貫通させる。

骨折部に近い方から留めていきましょう、ということだ。

もうひとつは、この””approximately 1 cm " というのが気になった。

古典的なDCPを使う場合、プレートの中央部のscrew hole の間隔は 1 cm より少し広い。

まあ”” approximately " だから良いのかもしれない。

しかし、DCPの中央部のscrew hole の間隔はもう少し広い。

             ー

ただ、理想的、というか、原則的かつ典型的な完全な横骨折などというのは現実にはほぼありえない。

                ー

こちらはもっと古いDenny のEquine Fracture Repair から。

右側の文章、2段落目、

骨折部から1cmのところに、3.2mmドリルで両皮質(こちら側と対側皮質)を貫く

とある。

この本でも、「骨折部から1cmのところに」とある。

左図は良心的。

左のscrewを骨折部から1cmのところに入れると、2本目の右screwは1cm以上骨折部から離れる。

骨折部にcompression が働いて1mmの幅もないとすると、1.4cm離れることになるだろう。

さて最新のLCPだとどうか?

中央を挟んだ2つのscrew hole の compression 位置にscrew を入れるなら、やはりその間隔は中央から1cmより遠い。

だから、LCPを使うとしても、もし単純な横骨折だとしても骨折線から1cmというのは骨折部に近すぎるかも?

と私は思う。

            ー

・基本は骨折部に近いところから

・骨折部から1(+0.2)cm のところに最初のscrew

というのが基本。と確認しておこう。

長くなるので、続く、かも。

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植えてから7年。

今年は、キタコブシの樹が初めて咲いた、と言えるほど花をつけた。

倉庫のナンバープレートは Oklahoma State University Veterinary Medicine のもの。

あれから24年。

 

 

 

 

 

 

 


舌小帯裂の重傷例

2024-04-28 | 歯科・口腔外科

2歳馬がウォーキングマシーンの中で舌小帯を切ってしまった。

縫おうとしたけど、さらに奥まで裂けている、とうことで来院。

とても奥まで裂けているので、全身麻酔して縫合することにした。

問題はすでに縫ってある手前じゃない。

舌が口腔の底から剥がれるように裂けている。これは右側。

左側も。

長い把針器を使ってなんとか縫えた。

この馬は舌の先に挟まれた?ような痕があった。

ウォーキングマシーンの中で何かを舐めて遊んでいて、舌がひっかかり、驚いて自分でひっぱった・・・・

ら、こんな裂けかたをするだろうか?

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今年もふっくら咲いたモクレン・サヨナラ。

春の喜び、愉しみ。

 

 

 


消毒?その前に掃除、その前に片付け

2024-04-24 | 感染症

日曜日、めずらしく入院厩舎が空になったので、馬房を掃除する。

馬房の端に積まれた敷き藁を別の馬房へ移す。

高圧洗浄機で壁についた下痢便を落とす。

ブラシで擦るよりは落ちるし楽だが、水圧の当てようによってはペンキが剥がれ、コンパネが削れる。

それでも落とせない汚れもある。

床はワラと便と尿がこびりついている。

高圧洗浄機で洗うと落ちるが、汚れが壁に飛び散る。

床と壁は交互に洗わないと。

壁のクモの巣とホコリが張り付いている。

これも高圧洗浄機で吹き飛ばす。

           ー

この季節、新生子馬の敗血症(関節炎)も多い。

分娩馬房の洗浄、消毒に注意しないと新生子馬が次々に感染することになる。

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ロドコッカス感染症もかなり出ている。

感染子馬からの痰や便は次の子馬の感染源になる。

           ー

これからはロタの下痢も流行する。

種付けに子馬を連れて行くのは十分に注意した方が良い。

           ー

この季節、生産牧場は寝る暇もないほど忙しい。

それでも感染症や伝染病が出たら、もっと忙しくなる。

消毒?その前に掃除を。そして、効果がある掃除をするためには片付けないとできない。

Salmonella やコクシジウム症が出た牧場、病院、厩舎を衛生管理するのは専門的な知識と経験が要る。

Clostridium, Clostridioides など芽胞菌で汚れると洗浄、消毒するのは至難の業だ。

しかし、畜産には必須の技術だ。

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消毒というと、すぐ「消毒薬は何が良いでしょう?」と言う話になる。

有機物があると消毒の効果などないというのは基本事項として習うこと。

消毒の前に十分洗浄しなければならない。

ロドコッカスは土壌にいる、増殖できる、となるとパドックを消毒しようか、と言う話もでる。

土を消毒するなんて無理で無意味。

やるならパドックの土の入れ替えだろう。

土は植物を育てることさえできる有機物と細菌の複合体。

 

 


子牛の脛骨骨折はプレート固定で治せる

2024-04-20 | 学問

私は2003年から牛の骨折のプレート固定手術を始めた。

馬の骨折をなんとかできないか、と本を読み、器材を揃え、少しずつ症例に対応してきたのを牛にも応用できると考えたからだ。

馬では治せるかもしれない、というのが現状だが、

子牛だと、1例も失敗せずに治してこれた。

2016年までは。

しかし、牛の骨折治療では、経済性との葛藤がつきまとう。

少しでも長いプレートを使うのがセオリーだが、使うscrew 1本にもコストがかかる。

ダブルプレートすればインプラント(プレートとスクリュー)代はほとんど倍になる。

LCP/LHSを使いたい症例でも、DCPの3倍以上の値段を考えると躊躇してしまう。

それでも、子牛の骨折ならこの程度のプレート固定で治る、という経験を重ねてきた。

2016年に1例失敗して、手技を考え直した。

2020年まで、脛骨、橈骨、上腕骨をプレート固定し治してきた。

その経験は広く日本の牛臨床獣医師に知ってもらい、

プレート固定の技術が普及すれば、今まで治せないとあきらめられていた子牛の骨折も治せるようになる、

と考えて、日本語で症例報告を書いた。

日本獣医師会雑誌へ投稿したが、悪戦苦闘した。

和文・英文併せて20編以上の症例報告や研究論文を書いてきたが、こんなに時間がかかったことはない。

タイトルさえ自分の思い通りにならなかったが、まあそれでも形になった。

多くの方に読んでいただきたい。

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論文を書くというのはガーデニングと共通する部分があるかも

土づくりをし、苗を植え、水をやり、肥料をあたえ、日の恵みを受け、

大きく育った枝を剪定し、

それでやっと花が咲く

見てもらわないと意味がない

 


疝痛開腹手術続き 必要のないdeja-vu

2024-04-20 | 急性腹症

午後、もう2週間疝痛が続いている1歳馬。

超音波で右腹腔を診たら、盲腸重積像が見えた。

手術室が空くのを待って開腹手術。

          ー

その夜は、そのあと1歳馬の結腸右背側変位の開腹手術があって、

さらに、繁殖牝馬の結腸捻転の開腹手術があったそうだ。

          ー

そして、朝出勤したら、繁殖牝馬の疝痛が来ます、とのこと。

来院したら馬運車の中で立てない。まず採血だけする。

なんとか起こして、診療室へ入れて、超音波検査だけやって開腹手術。

結腸捻転だった。

          ー

それから2頭ほど来たのだけ・・・・何を診たのだったか・・・・

午後、予定の関節鏡手術。

そのあいだに2週間不調が続いている1歳馬の診察。

胃潰瘍の内視鏡検査のために絶食して来院しているが、超音波検査で小腸の膨満が見えた。

小腸閉塞なのだ。

胃潰瘍があっても、それは小腸閉塞が続いていることによる二次的な障害の可能性大。

これも開腹手術。

回盲部の重積だった。

          ー

その間に、8日前にも疝痛で来院した繁殖牝馬の診察。

胃潰瘍の内視鏡検査のために来院したが、超音波で小腸の閉塞像が見えた。

1ヶ月ちょっと前に分娩している繁殖牝馬だが、もう痩せても来ている。

これも開腹手術した方が良い。

先の開腹手術が終わるのを待って、開腹手術。

もう既視感 deja-vu で何が何だか覚えていられない。

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今年、3月は31頭の開腹手術だった。

子馬の膀胱破裂は除く。

4月、17日までで14頭の開腹手術だったので、ちょっとペースは落ちたんじゃないの、と思っていたら、

これで19日間に20頭を超えてしまった。

            ー

盲腸重積、回盲部重積は葉状条虫症。

エクイバランゴールド、エクイマックスなどプラジクワンテル含有剤で駆虫できるはずだが、

ちゃんと口に入らなかったんじゃないの?と思われる症例が続いている。

駆虫の際にはちゃんと馬が飲み込んでいるか確認を!!

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ウメが開くのはまだか

毎年 季節はめぐり 花は咲くけど 待ち遠しい

既視感はこういうものにして欲しい