クローバー 〜1〜

気づき

「今日も1日いい天気だなぁ!」
勝は、玄関の前で体を伸ばしていた。
「中矢さん、おはようございます」
「おぉ、真理ちゃんおはよう!いい天気だねぇ!
清々しいよね」
真理は言葉を半分流しながら、靴をはいていた。
「いつも中矢さん元気でいいですね」
真理は半分嫌みを込めて言った。
正直中矢さんは、いい人だけど朝は会いたくないな。
「俺、元気だけが取り柄だからねぇ!今日も1日働くよぉ!いってらっしゃい!!」
勝は、真理の肩をおもいっきり叩いた。
いっ…痛い…
「あはははははっ」
この人に悩みなんて、絶対ない!
真理は決めつけていた今日、まさか真逆の事を思うとは。
大学を終え、バイトも終え、帰ろうとした。
「あっ…」
歩いていると、晴子が目の前に歩いていた。
「晴子さん!」
晴子はその声に振り返った。
「真理ちゃん!今帰り?」
「そうなんです。晴子さん劇団の方はどうですか?」
何気ない会話をしながら二人はアパートへの道のりを歩いていた。
「そうだ!郵便局ってこのへんってどこかな?」
「案内しますよ」
「ごめんね」
二人はいつもの道を外れて歩いた。
すると大きな工場が見えてきた。
「ここなんでしょ?勝さんの働いてる所…」
二人はなんとなく立ち止まり眺めた。
すると奥の方で怒鳴り声が聞こえた。
「なんだろね…」
二人は顔を見合せ、声のする方を見ていると勝がいた。
どうやら怒鳴られているのは勝らしい。
「どうせ何かしたんじゃないですか?」
「真理ちゃん冷たいね。皆でご飯食べてた時もなんかやけに勝さんには突っかかってたよね」
「別に嫌いじゃないんですけど、食べ方が気になって…」
そういや勝さんばっかあの時も…
勝は怒鳴られたらしい後、その場を去ろうとしたら二人に気付いた。
「あれぇ?どうしたの、二人とも」
「今から郵便局、真理ちゃんに案内してもらおうかと思って」
「ここまっすぐだよ!」
「もう!見てましたよさっき!」
「あぁ…怒鳴られてる所?いや、参ったなぁ…って、真理ちゃん具合でも悪いの?」
うつ向いていた真理に話しかけた。
真理は顔をあげ、キッと睨むように勝を見た。
「怒られたくせに何ヘラヘラしてるんですか!いつもそうやって怒られて、家に居づらいからわざと大家とか言ってあそこに住み着いているんでしょ?そのくせ知らない事多いし!ゴミの出し方わかってないし、出てく人とか、入る人わかってないし、こないだも」
二人は真理の勢いに押されていると、従業員の子が走ってきた。
「勝さん!…あっ、どうも」
真理と晴子も会釈をした。
「お話し中すみません」
「いいよ、別に。あっ、大丈夫だったよ。気にしなくていいから」
「本当すみませんでした。俺等がやらかしたミスなのに」
真理と晴子は顔を見合せた。
「だからいいって!それより次から頼むよ」
「本当申し訳ありませんでした。それで、見てもらいたいものがあるんでいいですか?」
「わかったよ。じゃあ二人とも俺行くね!」
勝は従業員と共に去った。
「真理…ちゃん…」
晴子が恐る恐る声をかけると、勝が遠くから叫んだ。
「真理ちゃん!説教の続き帰ったら聞くからぁ」
大きく手をふり、工場の中に入った。
「晴子さん…あたし…」
「勝さんなら大丈夫だよ。あんな笑顔で叫ぶくらいだもん。でも真理ちゃん、よく勝さんの事見てるね」
「えっ?……」
晴子は冗談のつもりで口にした。
「真理ちゃん好きなんじゃないの?」
「へっ?」
「あはははははっ、なーんて。あっ、あれ郵便局だよ…」
前を進んでいた晴子が振り向くと真理が顔を押さえて赤くなっていた。
あっ…ヤバい…真理ちゃんマジだったのか…
「そんな事ないです」
そう晴子に向かって叫び、真理は走り去った。
「あっ、いや、ま…りちゃん…まぁ郵便局わかったし…いっか」
さてアパート内はどうなるんでしょうか。




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