クローバー 〜1〜

夢の扉

今日はある劇団の入団テストがある。
正直あんな小さな町の見に来る人間なんて、友達ばっかり?って言いたくなるような劇団員だった自分が、憧れのガラクタに入れるかどうか…
晴子は入団テスト会場で、案内ハガキを握りしめながらごくりと唾を飲んだ。
「よし!」
晴子は意を決し、会場へ入った。
毎年とる人数はその時によって違う。
劇団にあった人間、より芝居力の高い人間が選ばれる。
1人もいない年もあるし、多くても3、4人しかとらなかったりする。
その中で50人はいるか!と言うような人数に正直晴子はビビっていた。
いやぁ…やっぱ無理?
発声練習や、ストレッチをする者、何かエチュードのような事をしてる者、その気迫に飲み込まれそうになっていた。
まずは……トイレ!
晴子はトイレへ向かった。
洗面台にずっと前髪をチェックする女性がいた。
「う―ん、うまくなんないなぁ」
横目で気にしながら、前髪をひたすら直す女性を見ていた。
「あのぉ…」
女性は、晴子の方を向いた。
「何?」
「初対面ですみません、失礼します」
晴子は女性の前髪を整えた。
「これのがいいですよ!」
言われた女性は鏡を見て笑顔になった。
「ありがとう!!!いやぁ、ちょっとの差なのにいい感じね!…受験生?」
「あっ、そうです!関係者の方ですか?」
女性はにっこり笑った。
「うん。裏方だけどね!頑張って」
すると女性は出ていった。
「ありがとうごさいます!……いい人だなぁ…」
晴子は女性に元気をもらった気がして良い感じに力が抜け、自分の番を待った。
次だ…
そう思ってると携帯が鳴り出した。
「すっ、すみませ―ん」
音切るの忘れてた〜!!
見るとたけるからだった。
「頑張れ!晴子ちゃんなら大丈夫だよ!
たける 勝 真理」
「30番から39番までどうぞ」
晴子は力いっぱい返事した。
「はい!」
中に入ると、審査員が5人いた。
顔は見た事ないが、脚本と演出を手掛ける中島凛々さんがいるはず…なんとか認めてもらいたい!
審査員を見渡し晴子は目を疑った。
「あの人…」
思わず口にしていた。
トイレで会った人!!!
しかも中島凛々!?




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