クローバー 〜1〜

いつも

「何よ!今まで一度もこなかったくせにぃ」
「わりぃな、今日も千秋楽見にきたからさ」
「ちょっとぉ!あたしの芝居!今日MAXだったのに…ねぇ!」
いきなりふられ晴子は戸惑った。
「あっ…そっ…そうですよね」
「まさか…川原さん思ってくれてなかったの?」
「そんなんじゃないで…」
晴子はたけるを見た。
「…す…本当に…」
広子は二人の様子にピンときた。
「あたしやっぱ戻るわ。川原さんもあと少ししたら戻りなさいよ」
「はい」
「じゃあ、下田またね。今度飲みにでも」
たけるは笑顔で手をあげた。
「おう!次はちゃんと見るからさ」
「あはははっ、期待せずに待ってるよ」
広子は小屋へ入った。
たけるは晴子を見た。
「ごめん。会えるって思ってなかったんだけど、会えたらいいなって思って」
「いえ…」
明日会うつもりでいたからまさか…
「晴子ちゃん」
「はい!」
「待てなかったんだ」
「はい…」
たけるは少し唇をかみながら、困ったような笑顔を浮かべながら、意を決したようにまっすぐ晴子を見た。
「とりあえず…このまえはごめん。好きな子、自分で泣かしちゃダメだよな」
晴子は一瞬止まった、
今…
「晴子ちゃん」
「はい…」
「俺、やっぱ好きなんだよ、晴子ちゃんの事」
晴子はなんとも言えない気持ちが込み上げてきた。
「たけるさん…」
「本番前にこんな話もどうかと思ったんだけど、とにかくどうしても伝えたくて」
「あたし…」
晴子はまっすぐたけるを見た。
すると、小屋の扉があいた。
「あっ!いた!川原!そろそろ準備!」
晴子は戸惑いながらたけるに笑い、後ろを振り返った。
「今行きます」
たけるは頭を抱え笑った。
「まただ」
晴子も思いだし笑った。
「前もそうでしたね」
二人して大笑いした。
晴子は笑顔で片手をあげた。

「行ってきます。見てて下さい!明日、公園にいます」
たけるは笑顔で頷いた。
晴子は大きく手をふり小屋へと消えた。
たけるはその姿を見送った。
「あの笑顔で明日フラれたら……面白すぎるな」
たけるは苦笑した。




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