「志乃さん…」 志乃はたけるの膝に手をおき、体をそっと近づけた。 するとたけるは爆笑した。 「へっ?」 志乃はきょとんとした顔でたけるを見た。 「いやぁ!生は凄いリアルですね」 志乃の頭の中で「?」が渦巻いた。 「今やってるドラマで似たようなシーンありましたよね」 志乃は失敗したと感じた。 「ん…あぁそうね。それで、主役の彼と結ばれてね」 「ずっと見てますよ。そういやもうすぐ始まりますね。見ましょうか!酒も少し持ってきます」 たけるは立ち上がり台所に立った。 たけるは本当はわかっていた。 志乃さん…なんで急に… こないだからなんか少し様子おかしいんだよな… たけるの頭の中には、体を近づけてきた志乃を晴子に置き換えて考えていた。 俺、本当最低だな… 頭の中から晴子の事を排除しようと思えば思うほど、どうしようもなく晴子の事が頭から離れなかった。 ピンポーン チャイムがなり、たけるはドアをあけた。 「ゆう…どうしたんだ?」 ゆうは玄関の靴を見た。 「志乃…?」 「あぁ、中で飲んでるよ」 ゆうは無言のまま靴を脱いだ。 たけるはゆうの頬が少し腫れてるのに気が付いた。 「ゆう?」 たけるはゆうの腕を掴んだ。 「顔…どうしたんだよ」 「会ってきたよ」 「誰に?」 ゆうはまっすぐたけるを見た。 「たける君が好きな子」 たけるは一瞬その言葉に胸が締め付けられそうになり、晴子の笑ってる姿じゃなく泣いている顔がよぎった。 「会ったって?」 すると部屋から志乃が話しながら歩いてきた。 「たける?だれがきたの?…ゆう…」 ゆうは志乃を無視して言った。 「川原晴子。たける君あの子の事が好きなんでしょ?」 ゆうは泣きそうなのを抑えながら力強く言った。 「……好きだよ」 「えっ?」 志乃が驚いて固まった。 「だったらなんでこんな所いんのよ! ゆうは、ゆうはたける君の事好きだけどっ、好きだから、好きだから自分の事思ってくれなくったって、たける君が嬉しそうに楽しそうにしてくれたらそれでもういいよ! だから高校ん時だって、志乃が好きだって言われた時! ゆうは泣いたよ!家で散々泣いたけど、たける君に笑っていて欲しかったから……だから協力するって言ったんだよぉ! ゆうだって、本当は好きになって欲しいよ! そしたら…そしたらゆうは絶対幸せにしてあげるのに…なんで?なんでなの?…」 泣き叫ぶようにゆうの姿を見て、たけると志乃は何も言えずただテレビの音だけが響いていた。 [先頭ページを開く] [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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