クローバー 〜1〜

忍び寄る

マンションのドアの前に人影が見えた。
「志乃さん…」
志乃はたけるに気が付くとにっこり笑った。
「やっと帰ってきた」
「あけますね」
たけるはドアをあけ志乃を招き入れた。
「どうしたんですか?」
志乃はソファに座った。
「ね、何かとらない?お酒も飲んでさ」
「志乃さんには飲ませませんよ!いくらここの最上階に住んでるからって、あんな絡まれたら本当困りますから」
志乃は足を組み換えた。
「じゃあ本当に絡まる?」
「何言ってるんですか、適当に俺作りますよ!これでも結構うまいんすよ」
志乃は煙草をとりだした。
「ふぅ…なんかたけるガードかたいね。あたしの事好きだって言った時は純粋な目、してたのに。大人になっちゃったのかなぁ」
たけるは冷蔵庫をあけながら答えた。
「全然大人じゃないですよ」
「えっ?なんか言った?」
「別に!……はいどうぞ」
志乃は笑った。
「あら?…酒は出さないんじゃないの?」
「なんか俺も飲みたいんで」
たけるはおかずをテーブルにおき、ソファの向かいに座った。
「それにしても志乃さんよく覚えてますね。告白なんて志乃さんが卒業する時じゃないですか…しかも俺フラれてるし」
「あの頃はあたしもデビュー直前だったからね。余裕なかったのよ」
たけるはビールをながしこんだ。
「俺はダメなんですよ。好きになる女の子………必ず報われない。こんな俺でも好きって言ってくれる子はそんな風に思えないし…」
志乃はたけるの隣に座りなおした。
「今ならいいよ、たける」
たけるは志乃を見た。
「志乃さん…」


晴子はアパートについた。
するとちょうどバイト帰りの真理がいた。
「真理ちゃん」
真理は振り返り笑った。
「晴子さん!今帰りですか?どうでした」
「うん、ありがとう。大丈夫だったよ。あたし、頑張るね!20日間の公演中半分だけど、ちゃんとのりきってみせるよ」
真理は晴子の腕にしがみついた。
「頑張りましょう」
「うん!」
「あっ……」
「ん?」
真理はたけるの顔が頭をよぎった。
真理の表情を見て晴子も感じた。
「大丈夫。公演終わったらちゃんとあたし告白する…つもり。最終日のチケット、送ったんだ」
「そうなんですか…」
晴子は笑顔で頷いた。
「あのぉ」
晴子と真理は振り向いた。
「えっ…」
「あっ…」
樫本ゆう…




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