「申し訳ございませんでした」 晴子は凛々に頭を下げた。 凛々は台本に目を通しながら言った。 「もういいの?」 「はい」 晴子は役をおろされる覚悟でいた。 「じゃあ、このシーンからやるから用意しな」 「いいん…ですか?」 「何がよ」 「一週間も稽古休んだんですよ?あたしおろされる覚悟で…」 「……やりたくないの?」 晴子はハッとした。 「いえ、やります。あたしの役ですから!青木の役、やらせてもらいます」 晴子は振り返りストレッチを始めた。 あたしは役者! 今はこの役を自分のものにしないと。 凛々の言葉に、たけるの事は頭の中から消えていた。 いや、消していた。 晴子は今まで解釈出来なかった部分も、かけあいをはじめ、いろんな部分がとれた事により、より役にはいりこめた。 こんな感覚…なんか初めてだ… 役をやる充実感でいっぱいになっていた。 あと一週間で本番… もうやるしかないんだ。 晴子は割りきろうとしていた。 その頃たけるは黙々と作品に打ち込んでいた。 しかし、何行、何行パソコンに打ち込んでも納得いかず全て消していた。 「あああああああ!!!!」 うなだれるようにベットに横たわった。 無音の外を眺めると綺麗な赤色に染まっていた。 もう夕方だったのか… たけるはフラりと外へ出た。 川べりを歩るき、草の上に寝転がった。 暗くなりかけている空を無言で眺めていた。 ふと横を見るとクローバーがあった。 たけるは起き上がりそっとクローバーを手にとった。 微かにクローバーが夕日により赤く染まった。 「四葉のクローバー…」 たけるはクローバーを眺めていた。 するとそれにかぶさるように影が重なった。 顔をあげると勝が立っていた。 「探したよ…」 「勝」 勝はたけるの隣に座った。 「クローバーか?」 勝はたけるの手元を見て言った。 「あぁ、しかも四葉。いいことあるかもな」 そういったたけるはあきらかに力なさげだった。 「たける」 「ん?」 「お前、素直になれよ」 勝はまっすぐ前を向いて言った。 「………素直…か」 「晴子ちゃん頑張ってるよ。だけどな」 「だけど」 「俺や真理ちゃんからしたら無理してるように見えるんだよ。本番まであと少しなのはわかるがその入れ込みようが、逆に怖くてな。俺等にはいつも大丈夫って笑うんだよ。でも…」 「でも?」 「目が……」 たけるは想像出来た。 「帰ってこいよ。晴子ちゃんの事、ちゃんと支えてやれよ。あの子は俺らの前だと無理するんだよ!わかってるんだろ?」 たけるは無言になった。 「なぁ!たける」 「………今は無理だ」 「なんでだよ」 たけるは立ち上がった。 「俺は俺で考えがある」 たけるはその場を去ろうとした。 「後悔したって知らないからな!」 たけるは振り返らず立ち止まった。 「それならそれで仕方ない」 勝はムカついて、たけるの肩を掴み振り向かせおもいっきり殴った。 「カッコつけてんじゃねーぞ!小説にいかせるとか思ってんじゃねーのか?そんなんで生かせねーぞ!お前は絶対間違ってるからな」 勝はたけるを越え歩いていった。 「っつー!…あいつ、自分の力が強いってわかってんのかよっ………ははっ、あははははは」 たけるは倒れ込んだままいつまでも空に向かい笑っていた。 [先頭ページを開く] [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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