クローバー 〜1〜

引越し

今日からここが俺の家かぁ…広すぎるな。
たけるは軽く笑い荷物をおいた。
ピンポーン
たけるがドアをあけるとゆうがいた。
「ゆう」
「マネージャーがたける君越してくるって言ってたからさ♪」
「越してくるって言うか、少しの間だけだよ。合宿みたいなもんかな!新作かき終えたら……」
あきらかに表情は暗く、何かあるとゆうは思った。
「何かあった?」
「いや、たしかにっ」
たけるは背伸びをした。
「あぁっ!……越してくるかもな…入りなよ」
「うん…何かあったんでしょ?」
ゆうは志乃が関係してると思った。
ゆうはたけるの前に周りこみ力強く言った。
「志乃でしょ?志乃がたける君に何かしたんじゃないの?」
たけるはフッと笑うと台所に立った。
「何言ってんだよ。志乃さんは関係ないよ。
まぁ一つ言える事は、酒は飲まさない方がいいよな!
あの人やたらエロモード全開でさっ!
本当、あんな美人にあんな風に言い寄られるとちょっといきそうになるもんなっ、あはははは」

たけるの無理をしてる感がゆうには我慢出来なくなった。
ゆうは思わずたけるを後ろから抱き締めた。
「たける君!無理してるよ。ゆうの話聞いてくれたみたいにゆうも聞くよ?ゆうはたける君のそんな顔みたくないよ」
たけるはゆうの腕を外した。
振り返り、ゆうの頭を撫でた。
「大丈夫だよ……珈琲でいいか?」
「いらない」
ゆうはいたたまれなくなり、たけるの家を飛び出した。
バタンッ
「何よ、あの顔……気になるわよ」
ゆうは唇を噛みしめマンションを出た。
「ゆう…」
たけるはドアをじっと見ていた。
「本当……なにしてんだろ」
台所に戻り珈琲をまた作りかけた。
「……………くそっ」
たけるは壁におもいっきり拳をぶつけた。
たけるの頭の中には、笑う晴子の顔が思い浮かんでいた。




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