クローバー 〜1〜

答え

たけるは部屋の扉をしめた。
どうしよう…
晴子は壁側に体をむけた。
「晴子ちゃん…大丈夫?」
「はい」
少しうわずった声で答えた。
あきらかに意識しているのがたけるにもわかった。
「熱…はかろうか」
たけるは晴子が眠る、反対側に手をのばそうとした。
晴子は上にかぶさるようにたけるが手をのばしたのを見て、自然とこわばってしまった。
たけるは、その姿に避けられていると感じた。
「晴子ちゃん…これ」
「はい」
晴子は手だけたける側にのばし、体温計を受け取った。
沈黙が二人を包んだ。
「晴子ちゃん」
「…はい」
「俺の事…」
晴子は言葉を最後まで聞くのが怖く体温計を渡した。
「まだ8度ありますね」
たけるは確信した。
「嫌なら部屋戻るよ」
たけるは立ち上がり扉に向かった。
晴子は胸が苦しくなり泣きそうになった。
「嫌じゃない」
小さな泣きそうな声でつぶやいた。
「やじゃない…やじゃないけど…」
晴子は涙を押さえる事が出来なくなった。
たけるは振り返り、ベットに腰かけた。
「嫌じゃないなら…」
晴子は自分でもどうしたらいいかわからなくなっていた。
「ごめんなさい…わからない」
たけるは晴子を抱き締めたくてしょうがなかったが、立ち上がり言った。
「ごめん。俺が悪いんだよね。こんな熱あるのに問い詰めるような事言って…」
晴子は体を起こした。
「大丈夫。しばらく俺ここ離れるから。魚猫賞ので違う雑誌からも声かけられてて。親父もなんか認めてくれたっていうか、エスミュージックで借りてるマンションに行こうかと思ってるんだ。だから…」
たけるは振り返った。
「そんな風に泣かないでいいよ」
「たける…さ」
ガチャ
真理が入ってきた。
「そうだお粥の…あっ、いや」
たけるが笑いながら真理の横を通った。
「真理ちゃんよろしく」
「下田さん…」
扉がしまり晴子と真理の二人になった。
真理はハッとし、晴子を見た。
晴子は口を押さえながら声をこらしながら泣いていた。
「晴子さん!」
真理は晴子の背中を抱いた。
「晴子さん…」
真理もどうしていいかわからず、晴子をずっと抱き締めていた。




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