クローバー 〜1〜

言えない言葉

夜があけ、晴子は気が付いたら眠っていた。
「ん…6時か」
晴子は洗面台で顔を洗い、部屋を出た。
帰って…きてるのかな?
晴子は下へおり玄関の靴置き場を見た。
まだだ…
晴子はしゃがみこみ、玄関から外をぼんやり眺めていた。
すると、たけるが帰ってきた。
「たけるさん…」
晴子は立ち上がった。
たけるは下を向きながら歩いていたが、玄関にいる晴子に気が付いた。
「晴子ちゃん……どうしたの?こんな朝早く…あっ、マラソン?」
晴子は首をふった。
「たけるさん…待ってて」
たけるは動きが止まった。
静かに体をおこし真剣な眼差しで晴子を見つめた。
「晴子ちゃん…あぁ!」
たけるは表情が明るくなった。
「真理ちゃんの事?」
その一言に晴子も思いだした。
「あ…あぁそうですよね」
そうだ、真理ちゃんの事言おうとしてたの忘れてたよ。
「大丈夫です。真理ちゃん」
「そっか…ちょっと気になってたんだ」
たけるは安堵感を浮かべながら、晴子の横を通りすぎた。
晴子は後ろをついて歩きながら、たけるの背中に胸がキュッとなった。
たけるさん…
晴子は無言で後をついて行きながらその背中にふれたくてしょうがなかった。
このまま手をのばして抱きつきたい…
たけるは自分の部屋の扉をあけ振り向いた。
「寝てないから寝るよ、おやすみ」
「おやすみなさい」
たけるは軽く笑い扉をしめた。
またなんにも言えなかった…
でもどこにいたんだろ…
やっぱ受賞のなんか主催者とか先生とかと飲んだりしてたのかな…
晴子も扉をあけ部屋に入った。


「あっ、ゆう?志乃だけど。たける!あたしもらっちゃうね!じゃ今日スタジオで」
志乃は携帯をきった。
「まっ、落とせるでしょ」
鏡で自分の姿をチェックしながらつぶやく志乃がいた。




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