クローバー 〜1〜

歓迎会

三人は鍋の用意をしアパートへ戻った。
すると玄関に女性が靴をぬいでいた。
「真理ちゃん!」
勝が声をかけると、真理ちゃんと呼ばれた女の子は振り返った。
「中矢さん、下田さん…」
三人も靴をぬぎながら話した。
「今帰り?」
「はい。バイトも早く終わったんで…所でこの方は…」
晴子はあわてて挨拶した。
「川原晴子です。今日引っ越してきたんです!よろしくお願いします」
すると真理は柔らかく笑った。
「菫の水野真理です。よろしくお願いします」
二人で笑いあいなんだかほんわかした空気が流れた。
「はい、はい、挨拶はそれくらいにして!真理ちゃん!歓迎会で鍋やるんだけどぉ…どう?」
真理はにっこり笑った。
「ぜひ!」
「よし!じゃあ百合に皆集合な!」
「俺の部屋かよ!」
「お前の部屋に鍋セットあんだから仕方ないだろう…なぁ」
勝は真理に同意を求めた。
「えぇ、そうですよ!」
「しゃーねーな」
それから全員いったん部屋へと戻り、百合に集まった。
「これ切りますね!」
「だしってこれか?」
「片付け誰か手伝えよ」
「えぇっと…」
全員バラバラに動きながらもなんとか鍋が出来つつあった。
「改めて。晴子ちゃんって何しに出てきたの?」
鍋をつつきながら勝が切り出した。
「舞台役者目指してるんです。中学、高校と演劇部にいて、高校卒業して二年間地元の小劇団にいたんですけど、もっと大きな事がしたくて…」
「へぇ…」
皆感心しながらなんだか微妙に間のあいた空気が流れた。
「あっ、あのぉ皆さんは?」
皆顔を見合せ、勝から切り出した。
「俺はここの大家と、親父のしてる工場を手伝っていて、いずれは継ごうと考えてるんだ」
「へぇ」
晴子は視線を真理に向けた。
「あたしはそこの大学生」
「………で?」
「えっ?」
沈黙。
「まぁまぁいいじゃん!真理ちゃんは女子大生!それ以上でもそれ以下でもなし!ね!」
勝は二人の肩をポンポンと叩いた。
「たける…さんは?」
たけるは視線を晴子に向けたがすぐに鍋に戻し、食べながら一言。
「小説家」
「へっ?」
「気にしないで。自称だから自称!」
「はぁ…」
なんかそれぞれ個性強いけど、皆いい人そうで良かった…
ってあれ?
「他に住んでる方はいないんですか?」
勝が食べながら話した。
「しゃんぐつまでもうずごじいがんだけ」
たけるが勝にツッコンだ。
「食べながら話すなよ!」
「3月までもう少し住んでたんですけど、それぞれ就職やら、お金が貯まったり、田舎帰ったりしてこのメンバーしかいないんです」
「なるほど」
それから四人は空が明るくなるまで語り明かした。




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