クローバー 〜1〜

告白

「痛いよ!たける君!」
「何考えてるんだよ」
ゆうは黙った。
「黙ってたらわかんないだろ?」
「ゆうが誰を好きになろうが、たける君には関係ないでしょ?」
たけるはため息をついた。
「お前な…」
「たける君が、ゆうの事好きって言ってくれるなら、ゆうは勝君とは付き合わないよ」
「あいつは俺の大切な友達なんだよ。それに前にも言ったけど、俺は好きな子がいるんだよ…」
「さっきの子?」
たけるは、公園のベンチに座った。
「さっきの子なんだ」
ゆうもたけるの隣に座った。
「ゆうじゃダメなの?」
たけるはじっと地面を見つめていた。
「じゃあ勝君と付き合うから」
ゆうは立ち上がろうとしたが、たけるに無理やり座らされた。
「俺を振り向かせたいから勝と付き合うなんて言うのか?」
「だったら?」
「……仕事も順調なんだし、俺なんかと付き合うよりもっと仕事頑張ればいいだろ?」
ゆうは、唇をギュっとかみ涙が出ないようにたけるから視線を外した。
「もう…疲れたんだよ」
「疲れたって?」
「…………」
「それくらいなら聞くよ」
公園で二人は夜遅くまで話していた。
その頃残された二人は家路についた。
すると玄関に真理がいた。
「二人一緒だったんですか?」
「うん」
「あぁ」
二人の暗い様子に真理は違和感を感じていた。
「じゃあ、おやすみなさい」
晴子は階段を上がって行った。
「どうしたんだろ……中矢さんも何かあったんですか?」
勝は真理から視線を外した。
「中矢さん…?」
「ごめん、真理ちゃん」
「えっ?」
「俺……」
勝は言葉につまった。
「何かあったんですか?」
勝が顔をあわさないのを見ていて、真理は思った。
「………あたしの事ですよね?」
勝は視線を外したまま何も言わなかった。
「……構わないですよ」
「えっ?」
「あたし、別にフラれたからって、無視したりとかしませんから」
真理は自分の部屋に勢いよく入った。
「あっ、いや、そうじゃないんだよ」
真理は扉越しに言った。
「何がですか?」
扉越しに聞こえてきた真理の声は、あきらかに泣き声だった。
「真理ちゃん…」
勝はいてもたってもいられなくなった。
「あけて!真理ちゃん」
「やです!」
「あけて」
「いやぁ」
「じゃあ無理やりドアぶち壊すから」
「それは困ります」
真理は勢いよくあけた。
すると勝は避けきれず、顔面を強打しうずくまっていた。
「すみません、中矢さん」
しゃがみこもうとした真理の腕をひっぱり抱き寄せた。
「真理ちゃん…付き合おう」
「えっ?」
勝は真理の体をはなし、まっすぐ見つめた。
「付き合おう?」
真理は、その言葉にまた泣きそうになった。
「はい!」
二人は見つめあい笑った。
「あっ!…」
「どうしたんですか?」
「ごめん…」
「はい?」
「さっき、キスしちゃったんだよね!ごめん」
「えっ?…えーーー!」
真理は立ち上がった。
「信じられない!キッ、キスしたって、それって犬や猫とかじゃないんですよね」
「うん…でも不可抗力って言うか、向こうから急に……」
「最低!」
真理は勢いよく扉をしめた。
「まっ、真理ちゃ〜ん」
勝はその夜、かなり長い時間真理の部屋の前で正座して真理の名前を叫んでいた。




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