クローバー 〜1〜

不可思議

晴子は思わずたけるの洋服を引っ張った。
「ゆう…」
「えっ!?」
晴子はたけるを見た。
「あいつ何してんだ」
今…
たけるさん、「ゆう」って言った?
「ゆうちゃん!急に何するんだ…」
勝が顔をあげると、たけると晴子の姿が見えた。
「たけるっ…あっ、いや」
ゆうはにやりと笑い勝の腕に手を絡めた。
「あらっ、たける君♪ゆうね、勝君と付き合う事にしたから」
『えーーーー!』
晴子と、勝は思わず大声を出した。
「ゆうちゃん?」
「勝さん?えっ?えっ?どういう事?」
晴子と勝があたふたしていると、たけるは無表情のままゆうの腕を掴んだ。
「ちょっとこい!」
「たけるさんっ!」
たけるは目は表情なく、口元だけ笑いながら言った。
「二人で先に帰ってて」
「ちょっとっ、たける君痛いよ」
二人は路地を曲がり姿が見えなくなった。
晴子と勝はそれを呆然と見送った。
ハッと気がつき、晴子は勝に言った。
「今の歌手の樫本ゆうですよね?なんで?」
「あっ、あぁ」
勝は、まずゆうはたけるの学生時代の同級生で友達だと話した。
最初は付き合ってるような感じの事を言っていたが、それは嘘だと言われ、今日………

「俺に用?」
ゆうは頷いた。
「たける君より…えっと」
「あぁ、勝。中矢勝」
「勝君のが気に入っちゃって♪」
「マっ、マジで?」
ゆうは勝の隣にぴったりくっついた。
「ねぇ?ゆうと付き合おうよ」
勝はデレーとしたが、真理の顔が浮かんだ。
「あっ、でも…」
「彼女いるの?」
「彼女じゃあ…ないんだけど」
勝は考えた。
真理とは付き合ってるわけではない。
今、自分はどう思っているのか。
隣にゆうがいる事を忘れ、思いこんでいた。
「ねぇ?」
ゆうの声にハッとした。
「はい」
「ゆうとデートしよ?それで決めてよ」
ゆうは腕を絡め、胸を押し当てた。
「ダメ?」
「いやっ、大丈夫です」
ゆうはニヤッと笑った。
ゆうは変装をしたまま映画を見て、ご飯を食べた。
「夢見たいだよ!ゆうちゃんとデートだなんて!」
「ゆうも楽しかったよ♪ねぇ、また行こ?」
勝はデレデレしながら考えていた。
ゆうは何かに気付いた。
「勝君、ちょっと」
「?」
勝は少し屈むと、ゆうは勝にキスをした。

「それで…」
「そうなんだ。キスされて。でもこれは真理ちゃんにはっ、いやっ、あの」
勝の言い訳は、晴子の耳には届いてなかった。




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