クローバー 〜1〜

郵便局

「みんなぁ!ちょっと聞いてよぉ!」
しーーん…
あれ?
晴子は皆に自分が役を貰えた喜びを伝えようと、アパートで大声で叫んだが、なんの反応もなかった。
晴子は時計を見た。
23時を回ろうとはしていたが、普段のアパート内は、深夜まで皆起きてるし、疲れて晴子が帰ってきたら、逆に寝かせてもらえないような事はあっても、こんなにしーんとしたのは初めてだった。
晴子は気を取り直し、こそこそっと二階へ上がった。
百合の部屋から灯りがもれていた。
たけるさん…
部屋をノックしようと部屋の前に立ったが、出来ずにいた。
告白されて、うやむやになってるんだよね…
言わなきゃって思うけど、役…せっかくもらったし、集中したい…
でもたけるさんの事も…
晴子は勇気が出ず、自分の部屋に入った。
台本読も……


気が付くと眠っていた。
今日は1日休みの日だ。
しかし天気はあいにくの雨。
晴子は、1日部屋で役作りに専念しようと決めた。
しかし微かに部屋の外からたけるの声が聞こえるとドキッとしてしまい、集中出来ずにいた。
「晴れてたら公園でも行くのにぃ…」
台本を閉じ倒れこんだ。
あたし…ダメだ…
返事をしたら、好きな気持ちがより加速しそうで、この役を演じるにはダメになってしまうと思っていたが、この中途半端な状況も晴子には悪影響を及ぼしていた。
晴子はやっぱり自分の気持ちをちゃんと言おうと部屋を出た。
出た瞬間、たけるも扉をあけた。
『あっ…』
二人とも口を揃えて言った。
晴子は覚悟を決めた。
「たけるさん、話があるんですけどいいですか?」
「今からコレ出しに行くんだけど、その後でもいいかな?」
手元を見ると大きな封筒だった。
「小説ですか?」
「うん!魚猫賞に出そうかと思って」
「あっ、一緒に行きます!…いいですか?」
たけるはにっこり頷いた。
二人は傘をさし、雨の中郵便局へ向かった。
「あたし、外にいますね」
「ちょっと待ってて」
晴子はドキドキしていた。
帰り…言うぞ!よし!
行きに話そうとしたが、たけるの世間話で言えずにいた。
ドン
人とぶつかった。
「すみません」
晴子は謝ったが、何も言われず、その人は郵便局へ入った。
感じ悪いなぁ…
そう思って郵便局を見るととんでもないことになっていた。
中から聞こえた声。
「お前ら動くなぁ!金出しやがれ!」
えっ?
えーーーーー!
さっきの人強盗ですか!?
どうしよう!
中にたけるさんまだいるよぉ〜!!!




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