クローバー 〜1〜

考え

たけるは一瞬思考回路が停止した。
こっ、こいつ…
「ちょっ、たける!どういう事だよ」
「ほっ、本当に樫本ゆうさんですか?」
ゆうはにっこり笑顔で言った。
「はい、そうです♪」
たけるはゆうの手を引っ張った。
「ちょっとこい」
「すみません、じゃあ」
ゆうを引っ張られて行く姿をただただ見ていた。
「真理ちゃん…」
「中矢さん…」
顔を見合わせた。
「とりあえず…部屋戻るか」
「はい」
二人は自分の部屋に入った。
「ゆう!何考えてるんだよ!」
たけるは部屋に入った瞬間、ゆうを怒鳴った。
「大きな声出さないでよ!いいじゃない、別に!
ゆうはたける君の事が好きなんだもん」
たけるは頭を抱え、ため息をついた。
「ゆう……俺、好きな子いるから」
ゆうの顔が一瞬に暗くなった。
「付き合ってどれくらい?」
「…付き合ってないけど…」
沈黙。
「じゃあまだゆうにもチャンスはあるよね!」
「悪いけど俺、ゆうをそういう感じで見た事ないから…キツい言い方かもしんないけど、嘘ついてもしょうがねーし」
ゆうはたけるから視線をそらし、手をぎゅっと握った。
「なんで?ゆうはずっと、中学の頃から好きだったんだよ!
ずっとずっと言ってきたんじゃん!エスミュージックにしたのも、たける君が…」
「ゆう。好きだって言ってくれるのは嬉しいけど、やっぱ妹みたいな感じでしか見れないんだよ」
「帰る…」
ゆうは部屋を出た。
「はぁ…」
たけるは頭を抱え、しゃがみこんだ。
「好きな子かぁ…」
視線を扉へ向けた。
コンコン
扉を叩く音がした。
「はい」
たけるが扉をあけると勝だった。
「たける!どういう事だよ!」
忘れてた…
「どういう事って、ゆうが言ったの嘘だからな。付き合ってないから」
「ゆうって!呼び捨て!?きゃーー!本当に?本当に?週刊誌に売らないから本当の事言っちゃえよ」
勝にたけるは圧倒されていた。
「中学、高校と一緒なだけだよ。うちの会社紹介したりしたから少し仲がいいだけだよ」
「……本当か?」
「嘘ついても仕方ないだろうが」
「なーんだ!…でも、今度サイン頼んでくれよ」
たけるはあきれながら色紙を受け取った。
「でもなんで色紙あんだよ」
「買ってきた!」
たけるは大笑いした。

「晴子、この役で今回出て見ようか」
「えっ…」
「皆聞いて!!青木の役、ダブルキャストでやるから」




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