クローバー 〜1〜

友情?愛情?

「中矢さん…」
勝は抱き締めた腕をそっとはなした。
「やっ…ごめん」
「いえ…あたしこそすみません…」
勝はポケットからぐちゃぐちゃのハンドタオルを出した。
「あ…だっ…これは」
真理は涙を拭いながら笑顔で言った。
「大丈夫です。借りていいですか?」
「うん…」
勝はハンドタオルを真理に渡した。
真理はハンドタオルを顔に近づけた瞬間大声で笑った。
「真理ちゃん!?」
「やだっ…洗ってないでしょ中矢さん」
「あぁ…俺もまさか持ってるって思ってなかったから…」
二人で顔を見合せてさらに笑った。
「真理ちゃん…帰ろ?」
「はい…これ、いいです」
「だよな!俺だってやだよ」
二人は並んで歩き出した。
信号で止まった瞬間、勝は前を向きながら話した。
「真理ちゃん…さっきの話だけど…」
真理は勝の顔を見上げたが、すぐに真理も前を向いた。
「はい」
「正直…真理ちゃんの事…そういう感じで見た事なかったんだ」
「はい」
勝は、真理の返事のトーンの低さに慌てて真理の前に周り、オーバーアクション気味に言い出した。
「あっ、じゃっ、別にだね!
真理ちゃんが嫌いなわけじゃないよ!好きは好きだけど、予想外な所からきたし!
いやっ…嫌われてるのかなぁ?なんて思ってたから、まさか告白されるなんて思わなかったし、別に今彼女がいるわけでも、好きな子がいるわけでもないんだけど、だからって『はいそうですかオッケーです』とすぐ言えるって感じ…あぁ!青になったね!渡ろうか!うん!渡ろう!」
あまりのそのテンションぶりに真理は少しひいてしまったが、すぐに笑った。
「別に、付き合おうとかないですから。なんか出ちゃっただけなんで…それに…」
「それに?」
「付き合うとか…正直よくわからないですから。このままでも…大丈夫です」
真理が隣にいると思い、顔をあげると勝はいなく後ろを振り返った。
「真理ちゃん!じゃあデートしよう!俺もちゃんと真理ちゃんの事考えるし、違う俺知ったら、実は勘違いって思うかもしんないじゃん」
勝は自慢気にぐっと親指を立てて言った。
「本当そうですね!今度二人でどっか行きますか!」
「真理ちゃん本当俺の事好き?普通、『そんなことないですっ』とか言わない?」
「気持ち悪い声出さないで下さいよ」
「ねぇ?真理ちゃん?俺はめようと企んでない?」
「違いま……あっ」
二人が前をむくと、凄い勢いで晴子が走ってきた。
「良かったぁ!…はぁはぁはぁはぁ」
凄く汗をかいて走ってきた晴子を見て、真理は勝の腕を引っ張った。
勝はピンときてポケットからだした。
「晴子ちゃん、これ使いな」
「あっ…ありがとうござ、うわっ!」
その反応に、真理と勝は満足気に笑った。




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