★パラダイス☆


「望様…どうされたんですか?こんな時間に…」
莉乃の声に望は顔をあげた。
「莉乃…」
なんだか莉乃には、望が泣きそうな顔をしているように見えた。
「望様…」
莉乃は望の隣に座りそっと望の顔に触れた。
「なんだか泣きそう…」
いたわるように莉乃は望の顔にふれていた。
望は莉乃の手を外し、その手を両手で握った。
その手をじっと見つめ、口をひらいた。
「大丈夫だよ。君の今までの苦労を考えたら僕の……いやなんでもないよ」
そう言って手をはなした。
莉乃は望を抱き締めた。
「何があったのかわかりませんが、無理しちゃ駄目です。あたしで良ければ聞くくらいならできます」
莉乃は望をギュッと抱き締めていた。
望が口をひらいた瞬間、ガサッと音がし二人は体をはなした。
「あらぁ?こんな所で何してるの〜?俺も交ぜてよ」
にやにやしながら晶が立っていた。
望は立ち上がり無表情で答えた。
「なんでもない。晶、お前も部屋に戻れ」
「じゃあ彼女部屋に送ったら帰るよ」
望と晶が見あったまま、莉乃はどうしたらいいのか戸惑っていた。
「あの、あたし大丈夫です。夜遅いって言っても敷地内ですし、すみません、失礼します」
「あらっ…行っちゃった。望のせいで行っちゃったよぉ…駄目だよこんなこそこそ女口説いてさ。聡には、駄目だって言っておいてさぁ」
無表情のまま望は、晶の横を通りすぎた。
「無視かよおい。これだからサラブレッドはさ…」
晶はしばらく望の後ろ姿を見ていたが、使用人の家に向かって歩きだした。
莉乃は部屋に戻ると、部屋の前に聡が立っていた。
「聡君!」
走って駆け寄った。
「どうしたの?」
「話がしたかったんだ。でもいなかったから待ってたんだ」
「そうなんだ…どうぞ。狭いけど」
そう言って、莉乃は聡を部屋へ入れた。
「今日見てて思ったけど、やっぱ凄いよね!」
そう言って莉乃は振り返ると、聡は莉乃にキスをした。
「聡君!!……あっあのぉ…」
喋ろうと瞬間、またキスをした。
抱き締めてそのままベットに倒れそうになった。
莉乃は体をはなした。
「何するの?話…しにきたんじゃないの?」
「僕……莉乃ちゃんの事…好きになったみたいなんだ」
そう言って莉乃を引き寄せ抱き締めた。
「聡君…」
今度はゆっくりと腕を外した。
「ありがとう…でもそんな、昨日の今日だし…それにあたし使用人だし…どうしたらいいか…」
「わかったよ。ゆっくりでいいから僕の事見てよ。でもあと少し…莉乃ちゃんの話聞いていい?」
小さく莉乃は頷いて二人は明け方まで話していた。

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