★パラダイス☆


「これより、王子即位式典を行う」
この式典に選ばれたメンバーはこれから1年、さらに勉強を重ね王様となる。
なぜこの若さでなるのか…
それは現王様の1人がもう長くないからである。
それと、マンネリ化しているこの国を変えようと新しい風を吹かすべく、集められたメンバーである。
莉乃はその華やかさに圧倒された。
使用人達は着付けを手伝い、パーティーの準備、招待客の管理に忙しく動いていた。
使用人と言っても、皆元は一流企業に勤めていたものが多く、年齢はたしかに莉乃よりも10以上は上の人ばかりだった。
しかし今回、人が足りないため本当は使用人になるのも、色々な資格や、試験を通らなくては行けないが、そうもいってられなくなってきた。
なので一般募集をかけ面接をしている。
しかしやはり使える人間は少ない。
その事を知り、莉乃はますます望に感謝をしたのであった。
王子候補1人1人名前が呼ばれ、入場した。
その姿を見て改めて莉乃は、昨日や今朝のように馴れ馴れしく話す人間じゃないと感じた。
そのオーラはやはり尋常なものではなく、使用人達や、城の人間もこそこそと話していた微妙な声がピタリと止まった。
莉乃は思わず息を飲んだ。
聡、光、玲、晶と入場し、最後に望が入場した。
望の姿を見て莉乃は今朝見た優しい笑顔がなく、無表情で凛々しいと言うよりロボットのような表情に、目を疑った。
緊張してるのかな…
式典中の望は、微動だに動く事なく、まるで魂が抜けてしまったかのように莉乃には見えた。
式典が終わり、パーティーが始まった。
莉乃は飲み物のグラスをひたすら下げていた。
「つーか、一つのグラスで飲めよ!!」
思わずグラスを運びながら口に出ていた。
「あはははっ」
笑い声の方をむくと、式典で光と呼ばれてた人間が笑っている。
「あっ、あっ、あっ!申し訳ございません」
パニックになりながら頭を下げた。
すると光は、莉乃に近づいてきた。
「いや構わないよ。たしかにその通りだよな。でもなぜか皆飲み物同じものでも変えるよな!同じでいいよな」
「そっ……そうですよね!」
「あっ…あはははっ」
また笑われたよ…
まぁいいや、あたしも笑っておけ!
「あはははっ」
すると後ろから寛一が歩いてきて莉乃の頭を殴った。
「さっさと運べ!光様、申し訳ございません」
「大丈夫だよ。面白いね君。莉乃ちゃんって言うんだよね?今朝皆話してたよ、若い使用人が入ったって」
「ちゃんと私めが教育いたしますので。ほらっ早くしろ!」
「すみません!失礼します」
「莉乃ちゃんまたね〜!」
一礼し、莉乃は台所にグラスを運んだ。
仕事が全て終わり、ヘトヘトで部屋についた。
莉乃は1日振り返ってみた。
どうしても望の式典の無表情が忘れられなかった。
それにパーティーで見なかったんだよな…
窓をあけ外を見ると、噴水の所で誰かが座っているのが見えた。
「望様だ…」
莉乃は思わず部屋を出た。

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