★パラダイス☆

19

望様と都様が正式に婚約する事が決まった。
来月、そのパーティーが開かれる。
あたしはあの二人が一緒にいる所を見て、なんとも思わずにいられるのだろうか?
婚約をすると言う噂話を聞いただけで、めまいが起きた。
自分から離れたくせに、今さらこんな想いをするなんておかしすぎる。
でもさらにおかしくなるかもしれない。
「あたしがですか?」
寛一が莉乃の部屋にきて言った。
「あぁ、せっかくのパーティーに聡様とお前の婚約も披露したいと。……お前と聡様が仲良くしてたのは知っている。王様達は、お前と結婚する事で庶民派をアピールしたいんだと思う。特に聡様は、農家の出だ。頑張ればこういう事もあるという、庶民の夢も見せてやりたいんだろう…。だから今日で使用人としての仕事が終わる。莉乃は今日から王妃候補として、やっていかなければならない」
寛一の話を聞きながら、あまりの展開に言葉もなかった。
「待って下さい。急に困ります。そんな…あたし…」
「決定事項だ。お前と聡様が付き合ってるのだって黙認されていたんだ。普通に考えたらあるわけないだろ!……まぁ相手が聡様だったからだろうがな…」
「考えさせて下さい。急に……」
寛一は肩に手をかけた。
「まぁそうだな。でも変わりはしないぞ。莉乃はまだ若い。それゆえに、すぐ結婚という形にはならないだろう。でもずっと旅をしてきて、こんなに長く滞在した所もないんだろ?この街はいい所だ。損はないと思うぞ。とにかく今日中に部屋をうつる事になるからな」
そう言い残し、寛一は去った。
あたしが、聡君のお嫁さんになるの…?
望様の話もそうだけど…あたし、どうしたらいいの?
どうしたらいいのかもわからないまま、部屋をうつされる事になった。
小さな部屋から急に華やかな部屋へ。
使用人として働いていた自分が、使用人達に世話をされている。その状態に違和感を感じずにはいられなかった。
「それくらい、あたしします!」
「莉乃様。そういうわけにはございません」
今までため口で話されたり、王子様達と仲良くしている自分に陰口を叩かれていた自分が……
鏡に写し出された、華やかなドレス姿の自分を見て、だんだん顔が険しくなっていった。
「良く似合うよ」
鏡越しに見えたのは聡だった。
「皆もういいよ」
「失礼します」
使用人達が出ていく。
聡は莉乃の隣に立った。
「綺麗だよ、莉乃ちゃん」
「聡君!…あたし」
「楽しみだね」
莉乃の声を遮るように聡が話始めた。
「嬉しいよ、莉乃ちゃんとの事…認められて。他のやつらもまた婚約とかするんだろうけど、一応うちの国は自由だからね!…って言っても、政略結婚とかもあるんだけど。そういう意味では、僕は好きな人と一緒になれるんだから幸せだよ!ね、莉乃ちゃん」
何も言えなかった。
あたしは今付き合っている。
彼の言うことは間違ってないし、間違って…いないんだけど。
「あたし……使用人のがいいな!なれないよ!やっぱ駄目!」
聡はその言葉を受け止めはしなかった。
「服装嫌ならカジュアルな感じでも普段は構わないよ!…そうだ!玲に頼んで薔薇園の薔薇をわけてもらって、パーティーで飾ろうか!綺麗だもんな」
「そっ、そういう意味じゃなくて…って、あっ…でも…」
うまく言葉に出来ない。
「望達とも話して、どんなパーティーにするか考える?都さんは、派手好きだからなぁ」
うまく頭が回らない…
「聡…君」
名前を呼ぶと同時に聡は莉乃を抱き締めた。
「それ以上言わなくていいよ。僕…幸せにするからさ」
扉の向こうで会話を聞いてる人間がいた。

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