笑顔で話す自分。 元気いっぱいな自分。 だけど気付いてる。 気付かないふりをしている。 なかった事にして、なんでもないふりをして、余裕があって全ては順調に進んでいる …。 順調に。 そう、順調に進んでいるんだ。 あたしは幸せなんだ……… 「莉乃」 振り向かなくてもわかる。 胸が締め付けられる思いがし、鼓動が早くなる。 息の仕方がわからなくなるほどに。 望様… 莉乃は満面の笑みを浮かべ楽しげに返事をした。 「どうなされたんです?」 「別に…ただ君が見えたから」 「そうです…か」 精一杯明るく声を出そうとしたが、まるで自分の声じゃないようにうわずった声が出た。 莉乃は玲が隣国に仕事でいない間、薔薇園の世話を頼まれていた。 横にたち無表情で薔薇を見つめる望。 息を飲む音まで聞こえそうなほど静かで、全身がしびれ汗が流れ、あきらかに意識してる自分に無理やり蓋をするように、その場を離れようとした。 二人っきりになっただけで、こんな状態になって…あたし…どうしよう… てのひらを見ると、いつの間にか強く握りしめていたため真っ赤になっていた。 こんなになるんなら、素直になった方がいいんじゃないの? いや、あたしは今聡君と付き合ってるんだし… 二つの思いが行ったりきたりを繰り返し、なんでもないふりをして、花に水をあげていた。 何も話さないわけにはいかない。そう思い莉乃が振り返るとそこには望の姿はなかった。 望様… 肩に何かがのし掛かるような、そんな暗い気持ちでいっぱいになった。 莉乃は唇を噛み締めた。 やっとの思いで息を吐き出し、首をふるとまた花に水をやった。 「頑張らなきゃね!…よし!」 言葉は元気だが、あきらかにその声は誤魔化せはしなかった。 「あはははっ…あはははっ、あはっ……ひっく…」 もう嫌… 誤魔化せない気持ちに押し潰されそうになった。 しゃがみこみ、あふれでる涙を必死でこらえようとしたが、必死になればなるほど、涙は流れていた。 ガサッ もの音にビクッとなり、莉乃は顔をあげた。 光が立っていた。 「莉乃ちゃん…どうした?」 顔をそむけ立ち上がり、急いで涙をふき光に背をむけた。 莉乃は精一杯明るい声で答えた。 「どうしたもこうしたもないですよねぇ!なんかぁ、薬剤かな?目に入っちゃって大変ですよ!」 笑ってみせた。 光は莉乃の隣に立った。 顔を見られないようにと莉乃は下をむいた。 「嘘つきだな」 「なっ…何がですか?」 光は莉乃を抱き寄せた。 「光…さ」 「俺見てたんだ!ずっと見てたんだ!俺……好きになってる…」 「光様?…」 慌てて莉乃は光を突き放した。 泣きそうな顔で、強い視線で光に言った。 「駄目です。あたしは駄目です。悪い人間なんです。駄目です…駄目…なんです」 体が震え、必死で泣くのをこらえた。 「駄目なんかじゃないよ。莉乃ちゃんは駄目なんかじゃない。本当は…本当は莉乃ちゃん望の事」 その名前に反応し、声をあらげた。 「駄目です!」 そう言って莉乃は走って行った。 「莉乃ちゃん!……ちくしょう…」 光はなんども壁に拳をぶつけていた [先頭ページを開く] [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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