★パラダイス☆

18

笑顔で話す自分。
元気いっぱいな自分。
だけど気付いてる。
気付かないふりをしている。
なかった事にして、なんでもないふりをして、余裕があって全ては順調に進んでいる …。
順調に。
そう、順調に進んでいるんだ。
あたしは幸せなんだ………
「莉乃」
振り向かなくてもわかる。
胸が締め付けられる思いがし、鼓動が早くなる。
息の仕方がわからなくなるほどに。
望様…
莉乃は満面の笑みを浮かべ楽しげに返事をした。
「どうなされたんです?」
「別に…ただ君が見えたから」
「そうです…か」
精一杯明るく声を出そうとしたが、まるで自分の声じゃないようにうわずった声が出た。
莉乃は玲が隣国に仕事でいない間、薔薇園の世話を頼まれていた。
横にたち無表情で薔薇を見つめる望。
息を飲む音まで聞こえそうなほど静かで、全身がしびれ汗が流れ、あきらかに意識してる自分に無理やり蓋をするように、その場を離れようとした。
二人っきりになっただけで、こんな状態になって…あたし…どうしよう…
てのひらを見ると、いつの間にか強く握りしめていたため真っ赤になっていた。
こんなになるんなら、素直になった方がいいんじゃないの?
いや、あたしは今聡君と付き合ってるんだし…
二つの思いが行ったりきたりを繰り返し、なんでもないふりをして、花に水をあげていた。
何も話さないわけにはいかない。そう思い莉乃が振り返るとそこには望の姿はなかった。
望様…
肩に何かがのし掛かるような、そんな暗い気持ちでいっぱいになった。
莉乃は唇を噛み締めた。
やっとの思いで息を吐き出し、首をふるとまた花に水をやった。
「頑張らなきゃね!…よし!」
言葉は元気だが、あきらかにその声は誤魔化せはしなかった。
「あはははっ…あはははっ、あはっ……ひっく…」
もう嫌…
誤魔化せない気持ちに押し潰されそうになった。
しゃがみこみ、あふれでる涙を必死でこらえようとしたが、必死になればなるほど、涙は流れていた。
ガサッ
もの音にビクッとなり、莉乃は顔をあげた。
光が立っていた。
「莉乃ちゃん…どうした?」
顔をそむけ立ち上がり、急いで涙をふき光に背をむけた。
莉乃は精一杯明るい声で答えた。
「どうしたもこうしたもないですよねぇ!なんかぁ、薬剤かな?目に入っちゃって大変ですよ!」
笑ってみせた。
光は莉乃の隣に立った。
顔を見られないようにと莉乃は下をむいた。
「嘘つきだな」
「なっ…何がですか?」
光は莉乃を抱き寄せた。
「光…さ」
「俺見てたんだ!ずっと見てたんだ!俺……好きになってる…」
「光様?…」
慌てて莉乃は光を突き放した。
泣きそうな顔で、強い視線で光に言った。
「駄目です。あたしは駄目です。悪い人間なんです。駄目です…駄目…なんです」
体が震え、必死で泣くのをこらえた。
「駄目なんかじゃないよ。莉乃ちゃんは駄目なんかじゃない。本当は…本当は莉乃ちゃん望の事」
その名前に反応し、声をあらげた。
「駄目です!」
そう言って莉乃は走って行った。
「莉乃ちゃん!……ちくしょう…」
光はなんども壁に拳をぶつけていた


[先頭ページを開く]
[指定ページを開く]


<<重要なお知らせ>>

@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
@peps!・Chip!!は、2024年5月末をもってサービスを終了させていただきます。
詳しくは
@peps!サービス終了のお知らせ
Chip!!サービス終了のお知らせ
をご確認ください。




w友達に教えるw
[ホムペ作成][新着記事]
[編集]

無料ホームページ作成は@peps!
無料ホムペ素材も超充実ァ