★パラダイス☆

12

都様と望様が許嫁…
いつも城の中でも王子様達のいる部屋の周辺にいるから、逆側のご令嬢の方にはあまり行く事がなく、接点はあまりないし、話し方が好きではなかった…。
でも普通に考えたら、望様だけ今の王様のご子息だから、そういう事があっても不思議じゃない。
優秀な人間を集めると言っても、やっぱり自分の子供に受け継いで欲しいもの…
あたし…何してるんだろう…使用人なのに。
たまたまきただけで、たまたま助けてもらって、たまたまあの場所にあたしがいた…から?
望様にとっては誰でも良かったのかも知れない。
あたしが…
あたしが…す…き……
なだけ。
噴水の水で遊びながら、噴水にうつる揺れる月を見ながら考えていた。
「夜遊び駄目だろ」
振り返ると光だった。
「光様」
「眠れないの?横…いい?」
莉乃は頷いた。
「なんかあった?いつもの元気ないじゃん」
「いえ…光様はどうしたんですか?この夜中に」
無理やり明るく笑った。
あっ…あきらかに無理してるって思われたかな…
「別に。俺も眠れないから散歩!天気いいから夜空も綺麗だしね」
莉乃は空を見上げた。
「本当…綺麗ですね…」
しばらく二人は無言のまま空を見上げていた。
「そういやないかも…」
莉乃が口をひらいた。
「なに?」
吹き出すように笑い、莉乃は光の方をむいた。
「笑い話になってないの!」
光も言われて笑った。
「そうかもな。でも今朝会った時も笑ってないよ。なんかヤバい事言っちゃたかもしんないけどさ」
その言葉に莉乃は顔が曇った。
その顔を見た光は空をまた見上げた。
見上げたまま光は莉乃の手を握った。
「大丈夫だよ。なんとかなるよ」
光は空を見上げたまま静かに言った。
莉乃も手を握りかえし、手のぬくもりに優しさを感じた。
莉乃は小さく答えた。
「はい…」
その姿を後ろから望が見ていたが、声をかけることなく部屋へ戻った。
戻ると部屋の前で都が立っていた。
「お前の部屋、ここじゃないだろ、戻れ」
望は冷たく言った。
「あの使用人がそんなにいいの?」
その言葉を無視し、部屋の中に入った。
「あの女…」
都は険しい顔のまま廊下を歩いて行った。

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