★パラダイス☆

10

「光様って凄いですよね」
部屋のベランダで腕立て伏せをする光に莉乃が話しかけた。
「えっ?」
光は腕立てを中断し、莉乃の方を向いた。
「すみません、続けて下さい」
「いや、そろそろ終わろうと思ってたからさ。準備しないといけないしね」
「そうですね!今日は、保育園まわりですね。でも教育とか興味あるんですね?玲様とか想像つきますけど…まぁ仕事ですからなんとも言えないですけど」
「だって未来は、今いる子供達が作って行くもんだし、将来俺らの後継者になるんだからより良い人材を育成するのは、当たり前だろ?」
莉乃は感心した。
「単なる体力馬鹿じゃなかったんだ……」
「ん?」
「あ!いや、すみません!!」
思わず二人で大笑いした。
コンコン
二人はドアの方をむくと聡がいた。
「仲いいねぇ」
「あっ!!!すみません!10時に部屋でしたよね!」
「何?聡の部屋いかななきゃなんなかったの?」
「すみません。今から書類すぐお持ちします!」
莉乃は大急ぎで部屋を出た。
「怖い顔しちゃってどうしたんだよ、聡」
聡は無言のまま部屋を出ようとした。
「おいおい、俺に用があんじゃねーのかよ……それとも莉乃ちゃん?」
聡が立ち止まった。
「晶から聞いたけど、手間取ってるんだって?まぁたしかにあの子、隙だらけだけど、なんか手は出しずらいわな……まさかマジになったとか?」
聡は振り返った。
「だったら?」
「おいおい、本気かよ!お前が本気になるような事あるんだな…まぁでも……」
「なんだよ」
「別に。早く行かないと部屋くんだろ?」
「望には絶対言うなよ」
そう言うと、聡は部屋を出た。
「あらら、本気になっちゃって…」
光はシャワーを浴びに浴室に入った。

夜になり、莉乃の仕事が終わろうとしていた。
望の部屋が少し開いていたので、中を覗いた。

すると、テラスの所で望が月を眺めていた。
「望様…」
扉に手をかけた拍子にあいてしまい、その音に望が気付いた。
「莉乃…」
「すみません。失礼します」
「あっ、待って!…少し話そうか?」
莉乃は頷いて中に入った。
扉をしめ、望がいるテラスに立った。
「月…見てたんですか?」
「あぁ……莉乃…聞いてもいいかな?」
「なんですか?」
「両親はなんで亡くなったの?」
莉乃は全てを語った。
実は小さな国であるがそこの王様の娘であった事。
まわりに囲まれた大きな国にせめこまれ、両親は国民の前で処刑された事。
そうなる前に自分だけ脱出出来た事。
そのためにいろんな人間が亡くなった事。
今までなんにも知らなかった自分が、いろんな国をまわり、いろんな事を学んだ事。
1人で生きてきたから強くなれた事。
でも本当は1人じゃなかったと思う事。
「君は本当に強いんだね…」
遠く見つめる望の表情に胸を痛めた。
この人はなんでこんなに1人なんだろう…
莉乃は思わず望にキスをした。
「莉乃…」
望を抱き締めた。
望は莉乃の腕を外しキスをした。

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